週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
今回の勝者はRCC(整理回収機構)、敗者は「山口ゴルフ&カントリークラブ」の名称で3カ所のコースを経営しているタナカインターナショナル(株)(以下、タナカ社)。同社はゴルフ場以外にもサーキット場を経営、ご多分にもれず巨額の借入が負担になっていたため、過去2年8カ月にわたり大口債権者であるRCCと裁判所のもとで話し合いを進めてきた。 しかし「1月下旬に担当常務レベルで口頭合意までしたのに、突然、会社更生の申立を強要され、嫌ならRCCから申立てると言われたので、対抗上仕方なく」(同社代理人弁護士)、タナカ社が民事再生の申立に至ったのは3月31日。そのわずか1週間後の4月7日、RCCが債権者の立場で会社更生の申立を行い、4月16日、再生法ではなく、更生法で手続きを進めることが決まった。 「(タナカ社の)経営体制・透明性に疑義がある」ことを理由に更生法を選択したというのがRCCの主張で、「昨年夏の時点では一旦合意したが、その後タナカ社側が誠実性が疑われるような問題を起こしたため白紙に戻り、この半年間改めて協議を進めて再検討した結果、やはり更生法でという結論に達した」(RCC代理人弁護士)としており、タナカ社側の言い分とは食い違う。 RCCの突然の“心変わり”について、タナカ社側はRCCの幹部の私的人間関係に原因があると疑っているようで「再生計画の内容如何にかかわらず再生法で進めることにRCCは反対している。 約4200人いる会員のうち、1週間程度で2200人までが再生法に賛同していたし、山口銀行、プレミア債権回収も賛同を得ていた。要するに反対していたのはRCCだけだったのに」(タナカ社代理人弁護士)とする。 手続きの大幅なスピードアップを狙った4月1日の改正で、更生計画認可に必要な議決権は、従来の更生債権額で3分の2超が民事再生と同じ2分の1超に、更生担保権額で4分の3超から3分の2超に緩和されたほか、計画認可まで全面的に禁止されていた担保物件の競売や営業譲渡が、裁判所の許可を取れば可能 になった。少なくとも、債権者数の過半数という頭数の制限もある民事再生よりハードルが低くなったわけだ。 今回のケースで当てはめてみると、タナカ社の負債総額293億円の内訳は、旧・日債銀から債権を譲り受けたRCCが150億円強、山口銀行と、住友生命関連ノンバンクから債権を譲り受けた米GM系のプレミア債権回収が約20億円ずつ、それにゴルフ場の会員が69億円(3966人)、サーキットの会員が24億円(164人)。 RCCは改正前であれば、更生法だと単独で可決するのは不可能だが再生法なら可能という状況に立たされていたことになる。会社申立の民事再生に乗りながら、金額面では単独で議決権を握る立場から巻き返しを図る作戦もあり得ただろう。それが法改正による条件緩和で更生法でも単独で可決できるようになったことが、RCCにプラスに働いたことは間違いない。 今回は会社側とRCC、双方の主張にかなりの食い違いがあり、安易に再生法で債権カットを目論むゴルフ場経営会社の姿勢に、改正更生法を追い風に債権者が一矢報いたケースとは言い切れない。しかし、倒産を怖がり問題を先送りしていた時代から、再生法の登場で大企業ですら倒産を恐れなくなり、一部には安易な債権カットを目論む経営者も出るほど“倒産”に対する感覚がマヒしつつある。 そんな中、改正更生法によって債権者が巻き返しを図りやすくなったことは間違いない。債務者である会社側への債権者の圧力が強まれば、再建計画を練る会社側の姿勢も自ずと変わってくるはずだ。 その恩典は会員が債権者である以上、会員にも当然もたらされるが、債権者同士は常に利害が対立するもの。会員は巻き返しを図る金融機関に“油揚げ”をさらわれないよう、結束して知恵を絞る必要が出てくるだろう。