週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
本誌読者なら「加圧トレーニング」という言葉は耳にしたことがあるかも知れない。杉原輝雄プロがシニア入り後、筋力アップを目的に、大阪からわざわざ東京・府中市にある専門ジムにまで足を運んで行っているトレーニング法だ。 可能な限り簡単に説明しよう。これは腕または太ももの付け根に、静脈の血流だけ止まるようにベルトをきつく締めて(動脈は止めないため止血ではない)行う、低負荷、短時間のトレーニングだが、四肢の静脈流を止めた場合、短時間の軽い運動でも、その部位から先の腕や足でも血液が多くなるため、ふだんは血流の少ない毛細血管にまで血が行き渡り、筋肉には激しい運動をしたときと同じような反応が起こる。それによって、乳酸などの代謝物が大量に蓄積される。次に加圧を解くと、その蓄積された乳酸などが一気に全身に流れ出す。すると、体内の乳酸濃度が急激に上昇するため、脳は激しい運動をしたと判断して大量の成長ホルモンを分泌、血液中に送り出す。それにより脂肪が燃焼するし、筋肉もつくという仕組みで、科学的にも立証され、国内だけでなく欧米でもすでに特許を取得している。 その最新のトレーニングを、自宅で手軽に実践できるウェアがこの4月に販売され、ゴルファーの間でもさっそく評判を呼んでいるのだ。 (株)フェニックスから発売された「カーツ」がそれで、ストレッチのシャツとパンツに、専用加圧ベルト4本のセットが基本。全国の同社販売店で購入できるが、購入に際しては同社が養成したアドバイザーから、個人の加圧の強度など、使用法について、入念な説明を受けなければならない(アフターケアにも応じる)。 すでに様々な競技の一流プロ選手がトレーニングに導入しているのだが、ゴルファーの反応も早かった。なかでも、日本橋三越ではゴルフ用品売り場で販売して、予想以上の売行き(4月1カ月間で、約130着、約400万円の売上げ)。 「この種の商品では、上々の立ち上がり。今後、口コミで大ヒットする可能性も感じています」(ゴルフサロン担当者) 同店でもそうだが、販売するアドバイザーは自ら試して効果を実感しているだけに、その効果のほども示しながら熱の入った説明をする。 「確かに、理論だけ聞いたときには半信半疑でしたが、やってみるとすぐに、しかも楽に効果が出たので、さっそくうちの女房にも勧めたほど」と前出の担当者。また、ゴルファーに向けては、「効果をすぐに実感することもできます。例えば、ヘッドスピードの計測でしたら、一度試着して、10分ほど軽くトレーニングしただけで、ほとんどの人の数値が上がります」(フェニックス企画生産部門長沼誠部長)と、心くすぐる効果も口にする。 もうひとつ、同じように身につけることで飛距離アップの効果が期待できる商品がある。フィットネス商品等を販売するコンビウェルネスが4月から販売を始めた「キネティックパンツ」というスパッツだ。もともとは、スポーツ医療で有名な船橋整形外科が中心となって開発したもので、交流のあったゴルフスタジオというショップから通販などで売られていた。 腰周りの筋肉をバランス良くサポートし、スウィング時の体重移動や腰の回転を無駄なく、スムーズに行わせる効果がある。 「飛距離も伸びますが、スウェイしなくなるので、とくに方向性がよくなります」(ゴルフスタジオ・石塚忠之社長) 実は同社では、昨年の某男子ツアー競技の会場で出場全選手にこれを配布。その後、2~3選手が個人的に購入したそうだ(契約上、公表は不可)。 それと同じ製品(OEM)が、この度コンビというナショナル・ブランドから発売されたというわけだ。 ところで、このスパッツだが、あくまで理論上での話に限って言えば、実際にスウェイを矯正する効果がR&Aで実証された場合には、ゴルフ規則(14-3)によってラウンド中の使用が禁止される「人工の機器」にあたる可能性がある。ちなみに過去こういったスパッツでルール違反になったケースはないそうだが……。