週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。

　昨年11月に東京地裁に民事再生手続開始を申立てていたノースショアCC（茨城）の経営会社・（株）北浦ゴルフ倶楽部と、運営受託会社ノースショアカントリークラブの2社が、4月4日付で民事再生手続廃止になったのも、原因は滞納税金だ。近日中にも破産宣告が下りる。

　2社の負債約310億円のうち、約1700名の会員から集めた預託金が218億円を占め、金融債務は約90億円。債権を譲り受けていた外資系のムーアグループへの営業譲渡をベースに再建を図る計画だった。

　そこでネックになったのが、3億円にも上る滞納税金。税金と従業員の未払い給料は、優先して支払いをしなければならない優先債権だから、再生債権のように再生計画でばっさりカットとはいかない。マケてもらおうとすれば個別交渉になる。交渉抜きで、税務当局に諦めてもらうためには破産しかない。

　当然、民事再生申立段階でこれだけの滞納税金があることはわかっていたのだから、もともと再生法は無理だったのに、再生法で時間稼ぎをしたのではないかと疑いたくなるところだが、「確かにゴルフ場での収益で支払える範囲でないのはわかっていたが、スポンサーがどのくらい面倒を見てくれるのかにもよると考えていたので、再生法の道を選んだ。でも、結局この分までは面倒を見てもらえなかった」（北浦ゴルフ倶楽部代理人弁護士）と説明する。

　かつてイ・アイ・イ系列のコースだったアバイディングクラブゴルフソサエティの経営会社である（株）アバイディングも同じく滞納税金が原因で破産の道を選んでいる。

　同社は昨年11月、同じくかつてイ・アイ・イのグループ会社だった（株）ヒルクレストゴルフクラブ（以下、ヒルクレスト社）に、債権者の立場から民事再生手続開始の申立を受けていた。負債約337億円のうち、約740名の会員から集めた預託金は83億円しかなく、筆頭債権者はメインバンクだった新潟中央銀行から債権を譲り受け、218億円の債権を持つRCC。

　アバイディングは、商品先物取引大手・光陽グループのコンサルティング会社・東京企業情報とファイナンシャル・アドバイザー契約を締結してスポンサーを募集、入札の結果、（株）ビーアイピーホールディングスなる会社への営業権譲渡も既に完了している。

　このため、アバイディングにはクラブハウス内の美術品など、資産売却で得た数千万円程度の預金が残るだけとなっていたところへ、国税がこのなけなしの預金を差し押さえてしまったというわけだ。

　偶然にもアバイディングの滞納税額もノースショアと同じ約3億円。こちらも「民事再生の申立段階では、税務当局との話し合いで何とかなると思っていた」（アバイディングの代理人弁護士）と言う。

　アバイディングの場合は、民事再生計画の中で営業譲渡を行うのではなく、大口債権者であるRCCの了解を得ることで裁判所の許可を取り、債権者集会を待たずに営業譲渡を実施しているのだ。これについては「債権者集会を通すと反対される恐れがあり、東京地裁もスピーディーな処理のために集会を通さない営業譲渡を歓迎している。最近では集会を通さない営業譲渡が主流」（同）だという。

　譲渡代金約6億円は、担保権を持っていたRCCに支払われているので、RCCとは話がついたわけだが、「この場合、税務当局は蚊帳の外。ゴルフ場の再生を図る上で、常にネックになるのが税金の問題。再生法で営業譲渡をやってしまい、税金が残ったところで破産というケースが多くなってくると、国税も黙っていないかもしれない」とゴルフ場経営会社の再建問題に詳しい弁護士は言う。

　会員にとっては、預託金が戻らないという点では再生法も破産も同じだが、営業譲渡や破産だと、プレー権はたとえ認められたとしても、法的裏付けのないものに止まることになる。プレー権に法的裏付けが認められるのは経営会社自身が再生してくれるケースだけだ。

　これら2社のように多額の滞納税金を抱えてしまってから再生法では遅すぎる。会員のためを思うなら、ゴルフ場経営会社には、せめて滞納税金が膨れ上がらないうちに“白旗”を上げることを望みたい？