週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
同大会の前身は「紀文クラシック」。主催者は(株)紀文食品で、第1回、第2回大会で樋口自身が優勝し、樋口が88年に長女・久仁子さんの出産後、復帰トーナメントとして89年の同大会を選んだように、同社と樋口の関係は深く、97年からは「樋口久子・紀文クラシック」に名称も変更されている。昨年は音楽業界の雄、エイベックス(株)との共催で現在の名称に変更。他に小口のスポンサーを集めて開催にこぎつけた。資金集めには苦慮したが、入場料を無料にするなどの試みでトーナメントの新しい形を模索、話題となった。 ところが、その紀文食品がスポンサーを降りるという話が、今年に入り、協会および大会関係者の間を駆け巡っている。 大会事務局長の西浦幹雄氏は、「こういった天下国家の状況ですから、どうなるかわかりませんが、開催に向けて鋭意努力しているところです。せっかく樋口プロが殿堂入りもしたことだし、大会はなくしたくない」と近況について報告。負担金の縮小については「まだ努力しているところ」と言葉を濁し、完全撤退についても「それはないと思いますが……」と否定はしたが、歯切れは悪い。 一方、大会のゼネラル・プロデューサーの戸張捷氏は「大会当初の目的はある程度果たしたので、紀文さんがこれまでのようなメインスポンサーでなくなるのは事実」と認めた上で「完全にスポンサーを降りる、という話は聞いていません」とも。日本女子プロ協会に出された主催者名も5月16日現在、紀文食品とエイベックスのまま。 しかし、周囲の動きは完全に紀文の縮小、もしくは撤退の方向に備えている。昨年はエイベックスと5000万円づつを拠出した大口スポンサーの紀文を失うか縮小するとなると大会のの存亡にかかわる。そこで関係者は新スポンサーを必死に探しているのが現状のようだ。 「お金が集まらなければ大会はやめるしかないけど、業界に貢献した人物を冠した試合がひとつくらい日本にあってもいいと思うので極力続けたい」と戸張氏。1000万円程度からのスポンサーを集めてなんとか開催にこぎつけようという熱意が伝わってくる。 日本ゴルフ界にとっては待ちに待った殿堂入り。日本人唯一のメジャー勝者(77年全米女子プロ)であること、女子プロ協会で長年、理事を務め、近年は会長としてその発展に寄与してきた実績が認められたのだが、皮肉にもその年に自らの大会がピンチにさらされるとは。 だが、殿堂入りしたゴルファーの名を冠した大会がなくなることは日本のゴルフ界にとっても残念なこと。せっかく殿堂入りしたのだから、この快挙を“追い風”に、スポンサー獲得のためのPR材料にするなどして、何とか大会開催にこぎつけて欲しいものだ。日本ゴルフ界のためを思う太っ腹なスポンサーの出現が待たれるばかりだが。