週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
アニカ出場への人々の注目は想像以上だった。前売りの入場チケットはすべて完売。コース近郊にダフ屋が立つ光景は、さながらマスターズのそれを彷彿とさせた。実際の入場者数は公式発表がなかったが、初日の木曜日は最低でも5万人、月曜から金曜までの合計は20万人前後と推定される。アニカが好プレーを見せた初日のテレビ視聴率(ニールセン調べ)は1.7パーセント。通常、予選ラウンドは3大ネット局ではなく、ケーブル局による中継のため決勝ラウンドよりかなり低いのは通例だが、それでも今回は全米の約140万世帯が視聴した計算になる。ちなみに、今年開催されたPGAツアー15試合の初日の視聴率平均は0.69パーセント(約60万世帯)。これだけでも、いかにアニカに注目が集まったかがわかる。 一方、アニカ予選落ち後の土曜日、決勝進出した男子選手たちは「“通常”に戻っただけ」と感じていたようだが、会場内はギャラリーも報道陣も激減、明らかに通常以下の静けさに。そんな中、盛り下がるムードにわずかな活気を与えてくれたのが42歳のベテラン、K・ペリーだった。3日目に前半29で回り、コースレコードタイの61をマークして2位に7打差の断トツ首位に。そして最終日、J・レナードが、前日のペリー同様、前半で29を出し、61を出し猛追、単独2位に入った。結局、首位のペリーはレナードに6打差をつけて優勝した。 通常の試合なら、61を出したペリーとレナードは、もっと話題になったはず。しかし、今大会で注目の的だった“スター”が予選落ちでコースを去った後とあって、普通なら優勝者を迎えるインタビュールームは70人前後の記者で溢れるのだが、ペリーのインタビューを聞いていたのは、せいぜい30人といったところ。 それでもペリー本人は「注目は確かに少ないけれど、もともと注目されることが少ない私にとっては十分注目されていると思っている。“アニカが出た大会で優勝した男”として記憶されるだろうけど、少なくとも皆に覚えてもらえるなら、私はそれで構わないよ」とニコニコ顔だ。大会前は、アニカの出場で警備の問題や試合の進行が台無しになるのではという懸念も出ていたが、終わってみれば、とくに大きなトラブルもなく順調に進行したと言えそうである。 それにしても、これだけ話題を集めるのなら、日本の試合でも女子選手を出場させようと考える主催者が現れてもおかしくはないが、トーナメントの主催者団体であるGTPAでは「たしかに話題には出ますが、実際に検討するといった声は今のところ聞こえてきません。アニカのように飛距離も実力もあり、それでいて華のある選手がいれば検討する主催者も出てくるでしょうけど、現状では日本の女子でそういった選手はいませんからね」(事務局) ただ、海外では女子選手が男子の試合に挑戦するのは、今後もハワイ在住の13歳のアマチュア、ミッシェル・ウィや、女性クラブプロのスージー・ウェイリーも男子の試合への出場が決まっているなどひとつのトレンドになりつつある気配もある。ほかにも、女子プロのパク・セリも「チャンスがあったら私も男子の試合に出てみたい」と口にしたり、K・ウェブも豪州ツアーの試合から推薦出場のオファーを受けているともいう。 大会主催者たちも、今回のコロニアルの大成功ぶりを見て、話題性の高い女子選手を男子の試合に呼ぼうと考え始めることは十分考えられる。ツアー界は、新たな形態へ脱皮しつつあるのかもしれない。