週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
ゴルフ界では、まず何といっても海外でのプレーを扱う旅行業界が深刻な被害を受けている。また、国際競技でも影響が心配されるが、今のところ韓国で5月に予定されていた女子アマチュアの国別団体戦・クイーンシリキット杯が7月まで延期されたぐらいで、プロの競技への影響は伝わっていない。 一方、用品業界だが、他の製造業と同様、最近は中国での製造比率を高めつつある。そのため心配されるところだが「香港に近い深センには工場、香港にはショップがありますが、被害はまったくないようです。影響といえば、日本からの出張を極力避けていることくらい」(ミズノ・広報宣伝部・西田維作氏) 同じく深センにアジアで最大級のボール工場を稼動させているブリヂストンも、「これまで現地工場で行っていた最終検品を日本国内で行うようになったくらいで悪影響はほとんどありません」(広報・嶋崎平人氏) ただし、同社は中国への出張はストップ。その代わりにメールやテレビ会議を活用。また、モノのやり取りは国際便で頻繁に行ってカバーしているそうだ。 工場の稼動も日本への製品の輸出も意外なほど順調のようだ。というのも、中国の最近の工場は、周辺の町からは隔絶した、広大な敷地に建てられているため。そして、従業員も多くは敷地内の寮に暮らすため、外部からのウィルスに触れる危険性はほとんどないというのだ。 「それでも全従業員(数100名)は毎日検温を実施し、日本から送った感染予防用マスクを着けてもらっています」(ブリヂストン) ならばダメージは皆無かといえば、一般には見えないところで大きな支障をきたしていた。それは、先の2社も触れていた人の行き来がストップしたことによる被害である。 「工場の製造ラインに乗れば現地に行かなくてもいいのですが、研究・開発や最後の微調整は、やはり顔を見ながら説明しないと伝わらないことが多いんです」と語るのは、クラブ設計家(「ツアー・プロジェクト」ブランド)であり、OEMで大手プランドのクラブ製造も行っている吉村忠義氏。 同氏は以前から中国・広州の工場に製造を委託していた。 「そこには大手の4つの工場がありますが、チタンヘッドは全世界の7割がそこで製造されているそうです」(吉村氏) 同地の事情に詳しい吉村氏は自社製品とは別に、OEM相手の関係者を率いて、年数回工場を訪れていた。実際に訪ねることで、細かな打ち合わせはもちろん、実は「世界の工場」たる同地ならではの、新素材など多くの最新情報を入手することもできるのだと語る。 そのうえ今回は「実は某有名ブランドの新プロジェクトがこの10月からスタートすることで進んでおり、クラブはウチのOEMになっていたんです。それが現地での最終打ち合わせができず、結局、立ち上げは来年まで延期されました」とやや気落ち気味に語る。 しかも、同氏によれば、どのメーカーも来春発売の新モデルはそろそろ設計の最終段階に入る時期とか。ということはSARSがゴルフ業界に及ぼす影響は、来春が本番?