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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。

週刊ゴルフダイジェスト 7/1号
2003年更新
各ゴルフ団体が遅まきながらSARS対策
感染地からの帰国者は10日間試合会場に行けず
 新型肺炎SARS、何とか沈静化に向かい始めたようだ。しかし、WHO(世界保健機関)により一度はそ伝播確認地域リストからはずされたカナダのトロントが、再度、伝播が確認された例もあるように、完全終息にはまだまだ時間がかかりそうだ。そんななか、国内のゴルフ競技団体が相次いでSARS対策を発表した。

 まず、男子の日本ゴルフツアー機構(JGTO)は6月2日の理事会で、WHOが発表するSARSの「伝播確認地域」から来日および帰国する選手や関係者に対し、日本への入・帰国後10日間(潜伏期間とされる)は試合会場入りを控え、感染していないことを確認の上での来場を要請することを決定。さっそく、その週のトーナメントから会場のロッカールームなどに書面を掲示、選手・関係者への周知を図った。

 それに続き、台湾出身の選手が多い女子ツアーを統括する日本女子プロゴルフ協会(LPGA)が9日に、さらに日本ゴルフ協会(JGA)が10日に、同様の対策を発表した。さらに、JGAは来日後10日間の大会会場への入場を控えてもらうことに加え、その国を出国する直前の健康診断書の提出も要請する。

「JGAの場合、海外から出場する選手は先方のゴルフ協会を通じて招待するので、今回の要請も先方の協会を通じて実施してもらうことになります」(JGA事務局)

 3団体が同時期に対策を発表することになったが、舞台裏で正式な協議があったわけではないようだ。

「文書などで連絡を取り合い、各団体とも同時期の理事会に諮った結果です」(LPGA 高須晧友トーナメント部門エグゼクティブディレクター)

 また、一部には「国際競技じゃないから仕方ないのだろうけど、もっと早く立案できたのでは」という声も聞かれるが、実際、JGTOの関係者は、「今にして思えば、3月に中国・深セン(広東省)で開催されたダイナスティカップのとき、空港でマスクをした人がやたら多かった。あそこで感染した可能性もあったんでしょうね」と漏らすくらい危機感が薄かったのは事実のようだ。もっとも、ゴルフ界に限らず、日本の国全体がそのレベルなのだが……。

 ところで、各団体とも対策は「要請」、つまり「お願い」レベルで、事実確認をしたり、確認できない場合は入場を拒否するという強制力はない。またそれに対し、選手・関係者から不満の声も聞かれないという。どうやらツアー側からの要請は理解・受け入れられたようだが、かといって、まったく影響がないわけではない。

 というのも、ちょうど先週は男子ツアーが空き週だったため、SARS伝播確認地域である台湾や中国勢(北京、広東省、並びに香港などが伝播地域)の中には一時帰国を予定していた選手もいたからだ。なかでもショックを受けたのが、中国・深センに自宅のある張連偉だ。

「彼は9日に帰国し、よみうりを欠場して2週間ほど滞在し、ミズノから出場する予定でいたようです」と語るのは、所属先の本間ゴルフのプロ担当・若林一仁氏。同氏によれば、来日中の夫人と連れ立って、帰国することになっていたのだそうだ。

「実は、中国には確か4歳だと思いますが、ひとりっ子のお嬢さんがいて、会えるのを楽しみにしていたんです」(若林氏)

 張は毎晩、愛娘に電話。電話できない日には、その声を録音したテープを聞いて、気を紛らわせていたというほどの可愛がりようだが、今回のJGTOの“お触れ”により、2週間、中国に帰ると、日本に戻って10日間出られないわけだから、さらに2試合、ツアー選手権まで出られなくなってしまう。というわけで、残念ながら今回は夫人だけが帰国。まだまだ日本に友人の少ない張は、どうやらしばらくは愛娘の声だけで癒される日々となりそうだ。

 しかし、台湾・中国の4選手を担当する若林氏によれば、どの選手も今回の処置に不平不満はないと語る。

「万一のときには、個人の問題ではなく、ツアー全体さらには国家的な問題にもなるからと、納得しているようです」

 帰国できない悔しさを、プレーにぶつけてもらおう。

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