週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
そのイリーガル用品というのはもちろん、反発係数が基準値を超えた高反発ドライバーのことで、なんと言い出しっぺが、あのタイガー・ウッズだったことから注目を集めている。実はUSA・TODAY紙が、全米オープン初日の新聞でこの問題を取り上げ、ウッズが「イリーガルドライバーを使用しているプレーヤーがいる」ことを指摘したと報じたのだ。 「かつて3ウッドでアウトドライブしていたプレーヤーの何人かは今では僕がドライバーで打っても、彼らより飛距離を出すことができなくなっている」と、違反ドライバーが少なからず使用されていることを、暴露したため話題に話題になったのも無理はない。 実際、ウッズは今年、ドライバーの平均飛距離は現時点で293.1ヤードで、昨年とほとんど変わらないのに順位では30位と大幅に下がっている。ただ、それが違反ドライバー使用選手が多くいることと、つながるかどうかは定かではないが。 さすがに、全米オープン期間中は、関心がそれてしまったが、最終日のインタビューで、ウッズは、何人かの選手が違反ドライバーを使っていることを改めて認めた上で、「試合期間中は毎日、出場選手全員が1番のティグラウンドでドライバーのテストを受けるべきだと思う。ツアーのコミッショナーとこの件について話し合ったが、僕は協力なテスト支持派なんだ」と語ったために、問題が大きくなってしまったのだ。 反発係数の制限は、すでにルール化されているが、この数値は、たとえほんのわずかなロフトの違いでも異なると言われ、たとえ一度認定されたドライバーでも、調整すると基準を超えてしまう可能性があることが指摘されている。そのために試合会場でのテストが必要と言われているのだが、現時点では、まだ簡易測定器がオフィシャルになっていない。 以前にも紹介したが、USGA(米国ゴルフ協会)では、今春、振り子式の簡易測定器を発表、来年一月からオフィシャルなものとする予定で、PGAツアーでも、7月のウェスタンオープンで、この測定器の試験的な使用を計画していたのだが、なぜかこれを取りやめている。 「確かに(振り子式テスト器は)簡単で、素早い計測ができるが、このテスト導入に反対がないかどうか十分に確かめてから決定するつもりだ。メーカーにテスト器使用の用意があることは伝えてあり、いずれ導入することになると思う」とフィンチェム・コミッショナーが語っているが、問題はすでにウッズが触れているように、どのようにこの測定器を使用するかという点に移行し始めている。その点も含め、PGAツアーでは6月30日のポリシーボードで具体的な話し合いが行われる模様だ。 つまり、テスト器を導入するにしても、器械を試合会場に置くだけで、選手に自発的にテストさせるのか? あるいは強制的に選手全員のドライバーをテストするのか? それとも、優勝者や上位選手のドライバーだけをプレー後にアテストする際にテストするのか? といったように、様々な方法があるだけに論議を呼んでいるというわけだ。基本的にはレフェリーのいないゴルフの精神から言えば、会場にテスト器を置いて、選手がテストできる環境さえ作っておけばそれで足りるのかもしれない。大リーグでさえ、使用バットの検査を行っていないのだから、ゴルフで選手全員のテストが必要なのか? といった論理もわからないではない。ただ、この場合、もしルールを故意に欺く選手がいたら、ゴルフの精神を尊重するためにも、選手資格の剥奪を含めた厳罰が必要となるはずだ。 一方、すでに今回のウッズのように違反ドライバーの使用を指摘する声が出ている以上、「違反ドライバーを使用する選手がいるかいないか知るためにも、(選手全員の)テストが必要」とC・ハウエルIIIがUSA・TODAY紙に語っているが、その論理にも納得できるものがある。しばらく、このテストを巡る論議は続きそうだ。