週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
ウィのスウィングが、E・エルス(ビッグ・イージーのニックネームを持つ)のそれに似ていることから、T・レーマンが「ビッグ・“ウィ”ージー」と名付けたそうだが、すでに今年は、日本の男子プロたちも出場した、地元ハワイでのパールオープンで43位タイになったり、女子のメジャー、ナビスコ選手権の最終日最終組でソレンスタムとラウンドして、9位タイの成績を収めたりしているのだから、アマチュアの試合で優勝しても当然と思われるかもしれない。 しかし、今回の優勝はウィにとっては「いろんな意味で初めてずくしだった」そうで、初の全国レベルの大会での優勝ということ以外にも、USGA108年の歴史の中で、年齢制限のない大会では、史上最年少優勝という記録まで作ったのだ。従来の記録は、71年にローラ・ボーが全米女子アマで作った16歳。それを32年ぶりに、しかも3歳も縮めたのだから、どれほどの記録かわかるだろう。 ウィが、アメリカの全国レベルで、初めて注目を集めたのは昨年のLPGA武富士クラシックの際、史上最年少の12歳で、マンデーを通過したときだ。しかし、この試合を含め、ウィは昨年はLPGAの3試合に出場したがすべて予選落ち。しかもその3試合で一度もアンダーパーを出したことがなかったのが、今年は、例えばナビスコでは、女子のメジャーの難しいセッティングにもかかわらず66を出し、チック・フィルA・チャリティでは、結果は33位タイだが、3日間で一度もオーバーパーを叩かない安定ぶりを見せていた。 そうした背景があって、今回のパブリックリンクスでは、マッチプレーという神経戦の中で、準々決勝では昨年の全米女子アマ優勝者、決勝では全米女子学生選手権の優勝者を大逆転で破り、栄冠を勝ち取っているのだ。 ソレンスタムが男子ツアーのコロニアルで予選落ちした後、LPGAで大活躍しているように、より難しいコースセッティングやレベルの高い試合でプレーすると一気に実力がアップするという効果があるのかもしれない。 「彼女はたぶん、タイガー・ウッズを見て育った世代における最初の本物の逸材といえるかもしれない」と語ったのは、USGAのディレクターを勤めるR・グレン女史だが、「ミシェルが出たことで、過去に例を見ない報道と入場者があった」そうで、人気のほうはすでにタイガーに近づいているとか。これでさらに男子ツアーに混じって、出場試合を重ねていけば、本当に女性エルスならぬ、女性タイガーに化けるかも? としたら、今回の優勝は、名手ミシェル・ウィの第1勝目としてゴルフ史に刻まれることになりそうだ。