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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。 内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。 |
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週刊ゴルフダイジェスト 7/22号 |
2003年更新 |
懸案の高反発ドライバー規制、来季から
試合開場でのテスト実施を米ツアーが発表
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米男子ツアー、ウエスタンオープン開催中の7月1日、コミッショナーのティム・フィンチェム氏が用具のテストに関する重大発表を行った。「来年1月1日からドライバーのテストを試合会場で実施する」――この発表は、先月の全米オープンで、タイガー・ウッズが「ツアーで違反ドライバーを使用している選手がいる」とコメントした直後だけに、ツアー界を揺るがしている。
その試合会場でテストする際に使用されるのは、PGAツアーとUSGA、R&Aが3者共同で開発改良中の新型振り子式ポータブル測定器(以下、新型測定器)だが、現在の基準値となっているドライバーの反発係数(COR)ではなく、キャラクタリスティックタイム(CT)という新たな数値で測定される。遅くとも来年の1月1日までに各試合会場に用意し、当面は希望者のみ(あるいは必要な場合のみ)の試験的実験期間とするが、その間に収集したデータの分析結果に基づき、いずれはドライバーテストの全選手義務付けへ移行する。
それにしても、違反クラブかどうかを確かめる機械を試合会場で稼動させるというのは、ゴルフ界始まって以来のこと。もし、なんらかの理由で来年1月1日までにUSGAが新型測定器を導入しない(あるいは、できない)場合でも、「PGAツアーはチャンピオンズツアー、ネイションワイドツアーを含む全ツアーにおいて、独自の方法によるテストを単独で開始する」と、フィンチェム氏は強気の姿勢。ちなみに、全米プロ等を主催するPGAオブ・アメリカとマスターズを主催するオーガスタナショナルは、テスト導入を現在検討中だとか。
ところで、発表されたのはいいが、あまりにも曖昧なため、選手や業界関係者を少なからず混乱させている。ウエスタンオープン会場にいたクラブメーカーのツアー担当者たちに「CTとは何か?」と尋ねてみても、「CTもCORも言葉が違うだけじゃないの? よくわからない」という具合で、正確に答えられた人は皆無だった。新型測定器は会場内のどこに設置されるのかについても、「知らない」「1番ティ」「練習場」と推測で答えるばかり。フィンチェム氏に尋ねても「それはまだわからない。選手たちにとって便利な場所になるとは思う」という返事なのだから、新発表の内容は関係者サイドでも、まだ正確な理解を得られていない段階のようだ。
気になるのは、今回の発表があのタイガー発言に影響されてPGAツアーがアクションを起こしたものなのかどうなのかという点だ。フィンチェム氏は、「ツアーに違反クラブ使用選手がいる、試合会場でテストを実施すべき、といった提言は、これまで複数の選手から受けている。別にタイガーが最初というわけではないし、テスト実施に関しては数年間かけて検討してきたのだから、今回の発表と全米オープンにおけるタイガー発言との間に特別な関連性はない。だが、ツアーに違反者がいるといった噂が広まっているのは事実。その噂を払拭するためにも、テスト導入を決めた」と言う。
一方、当のタイガーは、「今回の発表は正しい方向に向かっていると思う。選手に強制することなく一定のテスト期間を設けようという姿勢は理解できるけど、もう少しいいやり方があるような気もする」と、やや不満げ。さらにタイガーは、「誰かがボールを打ったとき、球離れの様子と出だしの100ヤードの飛び方を見れば、その選手が違反クラブを使っているかどうかはわかる。でも、飛距離が伸びるクラブをメーカーから渡されたら、誰だって喜んで使う。だから、違反クラブを使っているのは選手の責任ではなく、クラブメーカーの責任だ」と付け加えた。いずれにせよ、ツアーに違反者はいるという意味である。
全米オープン覇者ジム・フューリックも、「希望者のみのテストというのは全く納得できない。陸上選手に『希望者のみ尿検査するから提出してくれ』なんて言っても、誰も提出しないのと同じことだ。それに、複数のメーカーが新型測定器の正確性は疑わしいと言っている。でも、ツアーはとにかく実施してみればいいと思う。僕らはそれで傷つくことは何もないから」と、批判的だ。
まだ不確かな要素が多い中で行われた今回の発表ではあるが、来年からPGAツアーの試合会場でドライバーのルール適合テストが行われることだけは確実になった。そして、この問題が今後、さらなる物議を醸すことも確実である。
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