週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
今回、「入会申請取扱手数料」という新制度を設けたのは、国内10コースを展開する総武都市開発グループの、武蔵野GC(東京都八王子市)と、川越CC(埼玉県川越市)の2コースだ。市場で会員権を売買、名義書換手続を行った会員権業者に対し、5万円(消費税別)の手数料を支払うというもの。関東会員権取引業組合に加盟する会員権業者が対象で、7月1日から今年いっぱいまでの期間限定の制度である。 業者に対し、謝礼とかでなく、公の制度として手数料を払うのは非常に珍しいが、導入した経緯について総武都市開発では、「相場の低迷により会員権業者にとっても、取り扱いにくい会員権になっている。そこで我々の受けるべき利益の一部を会員権業者に還元することで流通を活性化し、名義書換により、スリーピング会員を、アクティブな会員に変えていくことが目的」(広報課)と説明する。 まず、前記コースについて、業者が扱いにくいという点は、相場に比べ名義書換料、名変預託金などの入会手数料に割高感がある点。これまで武蔵野GCでは正会員で名変料100万円と名変預託金150万円の250万円が、もうひとつの川越CCの正会員では名変料100万円、名変預託金100万円の200万円が必要だったが、7月1日からはともに名変料のみ半額の50万円に引き下げもした。 次に、会員権業者が扱いにくい点としては、「首都圏近郊コースでバブル期に高騰した会員権のためか、買い注文があっても、その金額に見合う売り主を探すのが困難な物件。売り主にも買い主にも厳しい注文がつけられ、その上、相場が低いので手数料も安く、儲けが少ない物件」(ある会員権業者)ということも挙げられる。 現在、両コースの市場動向は武蔵野は売り注文が約70万円。買い注文が5万円と開きがあり、川越のほうは名変料値下げの効果か、売りは同じく70万円だが、買いが30万円をはじめ10本ほど出始めたという。しかし、この1年は、ほとんど売買が成立しない、つまりコースにとっては名義書換はごくわずかというのが現状だった。ちなみに平成2年のピーク時には、武蔵野GCは5300万円、川越CCは4000万円の値をつけていた。 さて、今回の総武都市開発の新しい制度導入について、都内の老舗会員権業者は、「5万円欲しさに積極的に売るというように誤解されても困るが、流通の活性化につながるなら大歓迎だ。それ以上に名変料を下げたことで、これまで購入したいと思っていても二の足を踏んだ層の需要を掘り起こすことに期待したい」と話す。 もっとも、これまでにも一部ゴルフ場から会員権業者に、報奨金のようなものを支払う例は、とくにバブル崩壊後から現れ始めているという。 この点について、ゴルフ場総合研究所の降旗貞夫専務理事は、「バブル期は、ゴルフ場と会員権業者の間には、張り合うような雰囲気すらあった。市場売買が活性化して業者が儲かれば、ならばとゴルフ場も名変料を値上げして収入を増やすというようなことが行われてきた。だが今の業界の窮状を打破するには、両者が手を取り合うことだ。会員権業者にとって市場の活性化は生命線だし、ゴルフ場にとっても単に名変料収入が増えるだけでなく、スリーピング会員は預託金返還請求の予備軍でもあるので、これをいかに若い世代のアクティブな会員に入れ替えていくかが業界にとって大きな課題だ」と、大きな評価を与えた。 それにしても、昭和45年当時の相場を眺めると、武蔵野GCは60~65万円、川越CCは40~45万円で、ともに名変料は10万円。相場より高い名変料という現象は、やはり異常な状態であり、これが会員権が欲しいと思いながらも二の足を踏む、ゴルファーの会員権への購入意欲を阻害していることを、業界全体で真剣に論じて欲しいものだ。