週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
首位と4打差でスタートした最終日に5バーディ、ノーボギーのベストスコアタイの67。上がりの17、18番で連続バーディを奪ってトップをとらえた大山。プロ3年目、今季初シード選手とは思えぬ度胸と勝負強さを見せてプレーオフに進出、2ホール目のパーセーブで初勝利を決めた。 師匠・清元登子と姉弟子・不動裕理が全米女子オープン遠征中の、鮮やかな逆転初V。ツアーの大黒柱を欠き、さらに男子のツアー選手権の裏、と、地味に進行していた大会を、一気に華々しく盛り上げた。 宮崎県出身、小学4年生時に「テレビドラマの『プロゴルファー祈子』を観て、憧れて」ゴルフを始めた大山は、清元門下に入り、高校は親元を離れ熊本へ。熊本中央女子高2年の94年に日本女子アマ選手権を制した。後、日大に進学。4年時の99年に日本学生選手権を獲って、翌00年、高橋美保子、山口裕子、イ・チヒらとともにプロテストに一発合格を果たした。 そのテスト最終日の18番、360ヤード・パー4では、セカンドの残り距離はなんと40ヤード。大学2年時に190キロあったという強烈な背筋力のほどを存分に見せつけて、プロへの門をくぐっている。 ツアーデビュー年の01年には、早くもアジアサーキット・マレーシアレディスオープンで優勝。そして昨年は3月のステップアップツアーのヴァーナルカップで優勝、と、まさに一段ずつ階段を上っている大山。 今回のツアー初V時にも「まだ実感がないです。信じられないです。優勝したことが」と第一声を吐きながら「最後のアプローチは、今日初めてどきどきしたけど、なぜかパーを獲る自信があったんです」と言ってのけた。 優勝の3週間前まで悩んでいたアプローチも、ロフト角60度の新クラブ(フィール社製)を入手して、起死回生。グリーン手前の深いラフからの状況にも、この“救世主”が威力を見せた。大山は「あそこから1メートルちょっとに寄せたときには、嬉しくてついニコニコしちゃいました。優勝だ! とか思ったわけじゃないんですよ」と、報道陣に念を押した。優勝後も「実家には山ほどお祝いの花が届いて、電話もすごくいっぱいかかってきましたけど、私自身は何も変わってません」という大山。 「父(晃さん=個人タクシー運転手)からお下がりでもらった今の愛車(クラウン)はもう走行距離49万キロ。ちょっと調子も悪くなってたし……、いやホント、うれしいですね~!」と、何より興奮していた優勝副賞でもらった1500CCの自家用車だが、それも「結局お世話になっているおじさんにあげることにしました。私の車は、もうちょっと稼いでから自分で買います」という事になったとか。 せっかく手にした“もうひとつのV副賞”全英女子オープン出場権に関しては「行きたい気持ちはありましたけど…清元先生と相談して、今年は日本で頑張ろう、ということになったんです」と権利を放棄。ファンにとってはいささか残念な気もするが、「今は裕理さんに、練習量では負けてないと思ってます」と胸を張るだけに、今季これからの2勝目、3勝目の達成が楽しみだ。