週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
史上最年少、13歳の伊藤涼太の出場や、高校生の活躍が注目を集めた今大会。決勝に進出した選手の平均年齢は、今年の日本女子アマの19.7歳にはまだまだ及ばないものの、24.4歳(表参照)と、昨年より6歳以上若返り、内訳も中学生ひとりのほか、高校生が7人、大学生が11人、社会人は13人と、男子アマ界も若返り現象は着実に進んでいる。 優勝した甲斐慎太郎は日体大の4年生。決勝戦では社会人唯一のベスト8出場者、長谷川克を7アンド6で下して、同大に初めて優勝をもたらした。 優勝者に限って言えば、大学のゴルフ部に所属するプロ入り直前の選手が、アマ最高峰を制する今回のようなケースは、学生ゴルフが盛んになってからは多く、この合い間に社会人が優勝しているといった状況が続いてきた。だが、全体としてはやはり00年のマッチプレー制導入以来、学生有利の傾向はますます強くなっている。 長い間、日本アマを見てきている日本ゴルフ協会(JGA)の広報参与でゴルフジャーナリストの土井新吉氏がこう解説してくれた。 「女子アマ同様、マッチプレーになってから学生が有利なのは、予選で18ホールを2日間、決勝のマッチプレーでは、1日で1、2回戦の36ホール、翌日に準々決勝18ホール、さらに準決勝18ホール、決勝では36ホール(いずれも最終ホールまで行った場合)と優勝するには5日間で8ラウンドをこなさなければならず相当な体力が要求される。そのうえ、年間にこなす試合数も多いからです。社会人と言っても日本アマに出てくるような人は、練習時間だけを取れば学生とそう変わらないケースもあるでしょう。ただ、競技となるとそうは行かない。その試合数の差がそのまま結果に結びついているのではないでしょうか」。 確かに、学生は、リーグ戦も含めて試合が多く、競技の機会は圧倒的に多い。だが、土井氏はこうも続ける。 「ただ、こういう現象が起こることは以前からわかっていたこと。日本に限らず米国などでもそういった傾向は強い。学生が強くなりすぎ、目標を失った社会人のアマチュアたちが大会に出てこなくなってしまったら、アマチュアゴルフそのものが危機に陥る。米国では80年代、日本では96年に30歳以上を対象にしたミッドアマチュア選手権を始めたのはそれを見越してのことなんです」。 さらに用具の進化がこれに拍車をかけた。女子に比べて成長が遅い男子の場合、中学生は言うに及ばず、高校生になってもまだ体が出来上がっていないことも多い。そのため大人には太刀打ちできない部分があったが、これを補ったのがクラブ、ボールなどの画期的な進化だ。 「年寄りが若い者に対抗するために飛ぶクラブを使ったりするのと同じですよ」(土井氏)と、体力=飛距離の差だったものが、道具で補われ、中学生などの飛躍的躍進をを後押ししたということも大きな要因なのだろう。 低年齢化の進むアマチュア競技。これが、一部の限られたアマだけでなく、全体的な底辺拡大であれば素晴らしいのだが、まだまだそこには至っていないのが現状のようだ。