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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。 内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。 |
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週刊ゴルフダイジェスト 8/12号 |
2003年更新 |
会員が落札した大金GCで使途不明金発覚
新会社が元会社代表を詐欺で刑事告訴
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会員主導による再建のモデルケースとして注目を集め、小誌先週号の「ノンフィクションファイル」でも取り上げた大金ゴルフ倶楽部。ところが、同記事の原稿締切り後に事件が急展開。会員が作り、ゴルフ場を競落した会社の北條充男前代表が、新経営陣から詐欺罪などで刑事告訴され、23日には宇都宮中央署もこれを受理。ゴルフ場を奪い返す会員組織の“ヒーロー”が、一転して詐欺罪に問われるまでに至った背景には一体何があったのか?
まず、会員の会が落札するまでの経緯を簡単に説明しよう。大金ゴルフ倶楽部の経営会社であった南那須観光が和議申請し、事実上の倒産をしたのは平成7年6月のこと。翌年5月、会員組織「大金会員を守る会」は同社の破産を申し立て、会員から一口200万円(株式5万円、預託金195万円)で会員権を募り、自ら株式会社となってゴルフ場を競落、会員自らの手でゴルフ場を再建するという目標を掲げて突き進んできた。ちなみに、これに応じた会員は1000名を超え、振込金額は約11億円にのぼった。
そして今年4月、8億1111万1111円で、(株)大金会員を守る会がゴルフ場を落札。6月には(株)大金ゴルフ倶楽部と社名変更し、新経営陣となって再建の第一歩を歩み始めようという矢先だった。
守る会の会長を経て代表取締役を務め、競落まで活動の音頭をとってきたのが、今回、新しい経営陣に刑事告訴された北條充男前社長である。地元紙はおろか、全国紙、小誌も含むゴルフ専門誌にヒーロー的扱いを受けながら、一転して詐欺罪などの容疑に問われることになった。
この辺の事情について、北條前社長を刑事告訴した野沢佼二社長は次のように説明する。
「社名変更の後、7月1日から社長を拝命しているが、7月6日の取締役会の引き継ぎの席上、北條前社長による1億6800万円の使途不明金と、競売対策費と称する1億円が消えていることが発覚した。北條は1億6800万円は役員との密約で報酬として自分がもらったとし、また対策費については『関係者に迷惑をかける』の一点張りで領収書も示さない。悪びれる様子もなく、自分で使ったことを認めたが、そもそも普段から口にしていた無欲、正義はどこにいったのか。私も役員だったが、活動の趣旨を考えても、報酬の密約などあるはずもない」と、怒りを露にした。
小誌が先述の取材のためにゴルフ場を訪れたのは、北條前社長から野沢社長に交代した7月1日のこと。北條前社長は、会員から集めたお金は「競落資金以外、一銭も手につけていない」と強調。これを受け野沢新社長も「北條さんがいなければあり得なかった活動」と高い評価を与えていたのだが……。
会員から経営陣の管理の甘さに対し批判の声続出
ところが、役員の引き継ぎでいざ蓋を開けてみると、東京で5人、宇都宮で5人の10人で構成する管理保全委員会が管理し、1円も使えないはずだった資金の一部、1億6800万円が別の口座に振り込まれていることが判明。移された口座は旧会社名と酷似した「大金ゴルフ倶楽部会員を守る会」となっており、北條前社長が開設、管理していたことが明らかになっている。
(株)大金会員を守る会は、北條前社長、野沢社長も含め5人の共同代表取締役体制だったが、今回明らかになった資金の移動は、役員会で議決された形跡もなく、また管理保全委員会として認めたものでもなかった。印鑑と通帳は管理保全委員が別々に管理していたが、「代表取締役でもある委員を騙す形で、北條前社長が振り込ませたもの。
当初、我々と対立する別の勢力で200万円を払い込んだ会員がおり、そうした反対勢力の会員に退会してもらうべく金を返還するために移動したのが始まりのようだ。その後、死亡した会員の名を使って資金を移動させたり、趣旨に賛同した会員に直接その(別に開設した)口座に振り込ませた形跡も明らかになった。そのため被害総額は3億円以上になる模様で、正規の手続きを経ないで資金を移動した保全委員の刑事責任も免れないかもしれない」(野沢社長)と厳しい胸中を明かした。
その後、7月14日には野沢社長が北條前社長の“国外逃亡”の情報をキャッチ。翌日、東京の会員を成田空港に張り込ませ、北條前社長の身柄を確保し、車で宇都宮に連れ戻し事情を聞こうとしたが、東北自動車道の蓮田PAで北條前社長が「トイレに行きたい」と休憩すると、一瞬の隙に逃亡、現7月25日時点でも行方不明のままだ。これを受ける形で、19日には野沢社長が宇都宮中央署に詐欺罪の容疑で、告訴状を提出した。
取材後日、小誌記者に北條社長が電話で語ったところによれば、「8年間、本業を犠牲にして、大金のゴルフ場の競落だけに賭けてきた。競落後の残金は落札成功の報酬として私がもらう約束になっているが、私をよく思っていない勢力もいることもたしかだ」と話していた。
この点の真偽を野沢社長にぶつけると、「200万円のほか、会員からは会費としてこれまでひとりあたり計4万8000円を集めており、北條前社長の経営する会社に活動費として毎月10万円払ってきた。人件費等を考るとそれで足りるはずもないことはたしかだが、ならば正当な報酬を役員会に要求すれば良かっただけの話。そもそも落札の成功報酬だというが、すでに使ってしまった金を報酬とすることに無理があるし、正規の手続きで役員が契約を交わしたこともない」と語る。
7月21日には、この件に絡み、株主総会がゴルフ場で開かれた。株主会員制となったため、会員はすべて株主。530名の株主のうち、224人が出席、133人が委任状を提出。新会社には残金が130万円しかなく、2カ月後に迫る約4000万円の不動産取得税も払えない状況だが、総会は今後の運営のことよりも、5人の共同代表制度を採用、管理保全委員会を設けながら前社長の暴走を許した経営陣への批判に終始。中には経営陣の退陣を強硬に求める声もあったという。
「道義的責任は感じているし、総退陣も辞さない覚悟だ。情熱と資質を備えた人がいれば、手を挙げて欲しいと会員にはお願いした。ただ私は今回、告訴人として、北條の悪事に対し引き下がるわけにはいかないし、決着をつけるのが社長としての責任だと思っている。少なくとも自分たちのゴルフ場をなんとかしたいという会員の熱意を、こんな形で終わりにするわけにいかない」(野沢社長)
理想的と思われた会員主導の再建が、一転して刑事事件に発展する可能性も帯びてきた。しかも今後は特別背任や横領にも発展する気配もあるという。最近増えている会員主導のゴルフ場再建には、強力なリーダーシップが必要なことは当然だが、同時にそれを暴走させないチェック機能と、一部の者に任せない自己責任が必要なことを今回の事件は教えている。
いずれにしても、行方不明の北條前社長が全貌を明かすことこそ、この問題を解決する唯一の方法であり、8年にわたり活動の先頭に立ってきた北條前社長の使命ではないだろうか。
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