週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
大騒ぎは、全英の帰りの飛行機から始まっている。クリーブランド行きの飛行機に乗った彼は、機長から特別に挨拶を受けたことに始まり、トイレなどで席を立つたびに、乗客から写真を撮られ、サインをせがまれる始末。しまいには、収拾がつかなくなり、結局客室乗務員が仕切って、サインを望む乗客全員に、サインを配るなんてことが起こったとか。 空港に着けば着いたで、まずヒーローインタビュー。本来なら、空港から自宅に帰るところだが、人口わずか405名というオハイオ州のオストランダーという故郷には凱旋帰国が出きないまま、一路ニューヨークへ。新聞、雑誌、テレビと取材が続き、結局「今、クラブを手にするなんて考えられない。完璧に疲れ果てているよ」と、予定していたグレーターハートフォードオープンの出場も見合わせてしまった。 実は彼、全英オープン前の6月にビュイッククラシックに出場するためにニューヨークを訪れているが、このときはせっかくニューヨークに来たのだからと友人に頼み、人気番組「レート・ショー・ウィズ・デビッド・レターマン」のチケットを手に入れ、おのぼりさんよろしく、ビデオカメラ片手にスタジオに観客として観に行っている。しかし、全英オープンの優勝で、そのわずか1カ月後には、同じショーに今度はゲストで招待されているのだから、どれほど人生が変わったかわかるだろう。 また、「全英に勝っても、自分自身は何も変わることはない」と語り続けるカーティスのさわやかな素朴さに好感度が高まり、さらにマスコミからのインタビューが増えるといった状況になっている。 たしかに、全英の優勝がタナボタで、フロックとする見方もあるが、カーティスに対する好感度が高まるとともに、全英の勝利も実力の賜物とする意見が強くなり始めている。その第一の根拠は、全英の初日、風速秒速15メートルという強風の中、彼は難しいバック9をすべてパーで回っているというもの。初日、風が強くなった午後にラウンドした選手たちは、その時点でほぼ大半が優勝争いから脱落していた。 実際、3日目までの上位18人中、初日の午後にスタートしていたのは、カーティス、シン、P・フルケの3人だけ。 さらに優勝争いした選手の中で、ダボ、トリプルを4日間を通じ、一度も叩かなかったのはカーティスだけ。そういったデータから見れば、カーティスの優勝も当然との見方が出てきているというわけだ。ともあれ、実際に優勝しているのだから、それだけの実力があったことは、間違いないだろう。 今回の優勝により、もともと出場資格のなかった全米プロと、WGC-NEC招待にも出場が決まったが、「メジャーに勝っても何も変わらない」と自ら公言しているだけあり、8月23日に予定している結婚式も、NEC招待(地元・オハイオで開催)の大会期間中である土曜日の夜に執り行う予定という。 マスコミの取材攻勢に加え、結婚の準備、全米プロへの準備と大忙しのカーティス。これこそまさに嬉しい悲鳴だろう。