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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。 内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。 |
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週刊ゴルフダイジェスト 9/9号 |
2003年更新 |
ジュニア王国・沖縄ならではの試み。補導少年
立ち直りのきっかけ作りにゴルフ教室開催
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ジュニア世代の躍進が著しい沖縄県で、不良行為や問題行動のある少年などを対象にした、「少年の居場所づくりゴルフ教室」が北谷(ちゃたん)スポーツセンターのゴルフ練習場で8月15日に開催された。子どもの立ち直りのきっかけにゴルフを、という全国でも初の試み。真剣にボールを打つ子どもたちからはナイスショットのたびに歓声が上がり、大成功に終わった。
参加したのは沖縄県内11の警察署から、万引きや窃盗、飲酒喫煙など不良行為を起こした少年や、不登校など問題行動のある少年など、小中高校生合わせて30名。沖縄県の会員制ゴルフ場、パブリックゴルフ場、ゴルフ練習場で組織する「沖縄県ゴルフ場事業連絡会」が、少年の健全育成、非行防止キャンペーンの一環として沖縄県警、関係124団体で組織する沖縄県少年育成ネットワークに呼びかけて実現したもの。
これに先立つ7月29日には、大京CCで「第1回沖縄県少年育成県民ゴルフチャリティ大会」を開き、約200名が参加したその収益金で、今回のゴルフ教室を開催した。
ゴルフ教室の会場となった北谷町では、この6月、中学生など少年による集団暴行殺人、死体遺棄事件という痛ましい事件が起きてもいる。ゴルフ事業連絡協議会会長で、大京CCの上原昇総支配人は、「以前から青少年の育成について、何かできることがないかと考えていた。沖縄県では痛ましい事件が起きてしまったが、子どもの居場所や立ち直りのきっかけを提供できなかった大人たちの責任も大きいのではないか。今回、ゴルフ教室を開催してわかったが、きちんと挨拶はするし、後片付けも率先してやるし、なにより子どもたちの目の輝きに新鮮な驚きを感じた。不良のレッテルを貼っているのは、むしろ大人の側ではないかと、正直反省もさせられたものです」と話す。
当初、打ちっ放しのゴルフ練習ではゲーム性に乏しく、子どもたちもすぐに飽きてしまうのではないかとの意見が、ゴルフ事業連絡会でも少年育成ネットワーク内でも議論され、初心者がほとんどのためコースデビューさせるわけにもいかず、カヤックやボウリングの開催も検討されたという。だが、打ちっ放しであっても、子どもたちは初めて経験したゴルフに、終始熱中、熱狂の様子だった。
「一番遠い所では沖縄本島の最南端である糸満市から来たのですが、その子どもたちが『せっかく来たので、もっと打ちたい』と言ってくれたことが一番嬉しかったですね。そのため時間を延長して、思う存分打ってもらいました。週に何回か練習したいという子どももたくさんいたほどです」(上原会長)
沖縄県でジュニア大会を企画し、那覇市の壺屋小学校にゴルフクラブを開校するなど、長く青少年の育成に取り組み、今回のゴルフ教室にも参加した蒋野(こもの)利昭プロは、「それがゴルフの、人間を成長させる教材としての可能性ではないでしょうか。止まっているボールをひたすら打つだけのことですが、ルールやマナーはもちろん、いろんなことを考え、悩むことが、子どもたちだけでなく我々をも成長させてくれるのだと思います」
教室には、インストラクターが7名のほか、沖縄を代表するジュニアゴルファーである宮里藍ちゃんと父の優氏も特別参加。教室に参加した子どもたちにとっては、同年代の放つ迫力のあるボールが、さらなる刺激を与えたようだ。また、ゴルフ関係者、警察関係者や補導員ら約70名の大人も参加したが、藍ちゃんのデモンストレーションなども大盛況だったとか。なお、宮里藍ちゃんは沖縄県警の非行防止ポスターに登場しており、この日、高橋清孝県警本部長から感謝状も手渡された。
沖縄県警の少年課少年サポートセンターでは、「皆さんの協力でこうした教室が開催できたが、早くも来年以降、継続的に開催したいとの声がいろんな方面から上がっています。私どもとしても、やって良かったという満足のいくイベントでした。ゴルフ教室の後、関係者や引率してくれた警察官や教師、補導員とバーベキュー大会も開催したのですが、ある少年が『今度、補導されたら恥ずかしいし、お巡りさんにも迷惑をかける』と言ってくれました。子どもと私たち警察官の間で、ゴルフを通じて人間関係ができたことが、一番の成果ではなかったかと思います」(勢頭伸男・少年サポートセンター所長)
強豪ジュニアを次々と輩出する沖縄だが、ゴルフへの理解と、こうした地道な活動を支援する体制こそが、その強さのひとつでもあるような気がする。
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