週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
ゴルフ会員権相場が弱含みで展開するのは、例年、法人、個人とも減税を狙った損切り処分で売りが出る年末と、経済活動が低調になり、暑さからゴルフを控える夏と言われている。 ところが今年に限っては、6月末を境に一転、会員権市場が上昇に転じた。関東ゴルフ会員権取引業協同組合が2週間ごとに発表する、関東主要約350コースを対象にした単純平均値でも6月下旬を境に、わずかながら7、8月で上昇している。 冷夏でゴルフをしようというゴルファーの気分を反映した一過性の相場との見方もあるが、「猛暑に比べれば冷夏のほうが会員権需要を伸ばすことは事実だとしても、今夏は長雨だっただけに飛躍的にそうした需要を伸ばしたものとは考えにくい」と話すのは現代ゴルフサービスの大久保貢社長。むしろ「物件探しに苦労している」と、この時期の現状から、本格的な上昇相場に転じたと見ている。 「東京、神奈川のゴルフ場の会員権相場が、全国の相場を先取りするというが、とくに東京近郊のコースの買い注文が増えている。当初、小金井、東京よみうり、戸塚、磯子といった高額コースの買い注文が目立ったが、現在では東京国際、八王子、中津川といった300万円以下のコースにも波及してきた。これを追うように埼玉、千葉、茨城でも同様の傾向が見え始めた。この動きが500万円から1000万円弱のコースに及んでくれば、目に見える形で相場が展開するのではないか」(大久保社長)と予想する。 たしかに、買い注文は増えており、たとえば現在、小金井では多くの買い注文が入っており、東京国際では1本に対し2ケタの買い、八王子でも少ない売りに対し、やはり2ケタの買いが入っている。他にも、軒並み相場を上げており、こうした傾向は他県でも現われている。ちなみに、100万円以上のコースで6月末から相場を上げた所は、東京で7コース(下げたのは2コース)、神奈川で9コース(同4コース)、埼玉で15コース(同5コース、千葉では18コース(同7コース)に上る。 住地ゴルフの稲葉博之企画室長も「たしかにこの時期に相場が上がるのは例年にない動き。6月決算で企業業績が出て、リストラや不良資産の売却などで増益となった企業も多い。それが1万円台を回復した株価にも影響したわけですが、企業にとって不要なゴルフ会員権もほとんど処分した後ということもあり、企業オーナー、役員、あるいは医師、弁護士といった方からの注文が増えた」と分析。 もっとも不安材料がないわけではない。バブル崩壊後、少し上がり基調を見せても長続きせず、ズルズルと相場が下がり続けてきたのも事実だ。その一因として、冒頭で記したように、年末が近づくにつれ、損切り処分の売り注文が多く出て、相場回復の足かせになってもいる。 だが、前出・現代ゴルフサービスの大久保社長は「法人が相場を引っ張っているとの声もあるが、基本的には高額も低額も個人主導で動いている。とくに企業オーナーや役員の場合、すでに売るべき会員権は処分してしまって使える会員権がない、もう1ランク高いコースが欲しいとの需要が多い。 今後、個人の中堅コースへの買い替え需要も見込まれるだけに、かなり本格的な回復と見ていいのでは」と語る。 つまり、かつてのような投資ではなく、プレー権重視の、個人需要が支える相場回復であるだけに、一過性の上昇ではない、というわけだ。 これまで下がり続けるる相場や、相次ぐ倒産の影響で、会員権を持つことへの不安は絶えなかった。しかし相場上昇を機に、会員権を持つことが、夢を持つ時代へと転じて欲しいものだ。