週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
小誌既報通り、破綻した大金GCを、会員組織である(株)大金会員を守る会が競売で落札したのは今年4月のこと。和議申請から8年。会員が200万円ずつを拠出、経営会社を破産に追い込み、約8億円で自分たちのゴルフ場として手中に収めた一連の活動は、会員有志による自主再建のモデルケースとして、各方面から注目を集めた。 ところが、再出発を図った矢先の7月、浮上したのが北條充男前社長による約1億7000万円もの使途不明金疑惑だ。会員から集めた約10億円のうち、競落資金約8億円を除いた約1億7000万円余りが、口座からすっかり消えていたのだ。 北條前社長は小誌の取材に、「残金は報酬としてもらった」としていたが、経営を引き継いだ野沢佼二社長は「すでに使ってしまったお金が報酬とは理屈が通らない」と対立。7月14日に、会員らが成田空港で北條氏の身柄を拘束したが、宇都宮に帰る途中で逃走され、現在も行方不明の状態が続いている。前後して新経営陣は同氏を詐欺罪の容疑で刑事告訴。まだ逮捕状は出ていないが、宇都宮中央署はこれを受理している。 真相解明は司直の手に委ねるとして、銀行口座残高わずか131万円という厳しい状況からの再出発を余儀なくされることになった大金GC。10月に支払い期限が訪れる不動産取得税約3000万円も目途が立たず、当面約1億円の資金調達が新経営陣の課題となっていた。 臨時株主総会には委任状約230名を含む、約360名が出席。道義的責任を取る形で、野沢社長を除くすべての役員が辞任。新たに会員(株主)の中から、取締役1名と監査役2名を選出した。その上で旧守る会時代からの役員も含む、24名の役員が責任に応じ、ひとり当たり50万~100万円、総額1350万円を会社に拠出した。また、競落資金を管理していた保全管理委員会の8人の委員が、資金流出の道義的な責任を取り、総額600万円を拠出した。 しかしながら、当面必要とされる1億円の資金には及ばないため、約550名の会員に対し、1人あたり13万円の臨時会費を徴収することを提案。総会では、ほぼ満場一致でこれが了承された、というわけだ。 「まったく反対者がいないといえば嘘になる。だが、反対を声高に叫ぶのは7~8名で、多くの会員の皆さんから、自分たちのゴルフ場をなんとかしようとの思いでご協力頂いた。私が留任したのは、会社の代表取締役として北條を刑事告訴した当事者であり、途中で投げ出すわけにはいかないから。また、集客力アップや会員権募集など経営課題も多く、安定経営に一定の道筋をつけることが社長としての責任だと思う」(野沢社長) 使途不明金問題に絡み、実際に問題も山積している。北條前社長時代、死亡や転勤などの理由のある一部会員に対しては脱会を認め、競落のために集めた資金を返してきた。ところが脱会したものの、未だ資金が返還されていない会員40~50名の存在が明らかに。さらに、会社としては把握していない、北條前社長の個人口座に資金を振り込んだという会員も現れるようになった。 「こうした方々は株主会員ではなく、被害者です。その方たちの救済も、会社としてやっていかなければならず、現在、個別に対応している。また定款に違反し、資金を移動させた2名の保全管理委員に対しては、総額約4億7000万円の損害賠償請求訴訟を起こすことも社として決定した」(野沢社長) 破廉恥な事件に遭遇したが、会員主導の再建には違いはないだけに、今後についても注目していきたい。