週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
このテストの前週、8月26日に日本プロゴルフ協会(PGA)が「日本ゴルフツアー機構(JGTO)が管轄するツアーの賞金シード選手でPGA会員でない者に対し、入会を希望する場合には、PGA資格認定プロテスト(実技審査)を免除することを決定」と発表したため、その時点でランク46位で今季の賞金シードを確定させている宮里優作は急遽テスト受験を取り止めたのは本誌既報の通り。 宮里という“目玉”抜きとなった今回のテストで、4ラウンド通算18アンダーという好スコアでトップ合格したのは、日本ジュニア、日本アママッチプレーなどのタイトルを持つ日体大出身の清田太一郎。宮里同様、今季から推薦でツアー5試合に出場しているが、賞金ランクは105位と、シード確定にはまだ程遠い位置にいる。ちなみに、プロテストは、プレ予選、1次、2次、最終と4段階あるが、清田は2次から受験している。 PGAとJGTOの分裂以来、JGTOのQTで上位に入れば、PGAのプロテストに合格しなくてもツアーに出場できる仕組みに変わった。そのためツアーでの活躍を目指す選手の中には、プロテストを受験せず、QTだけに専念する選手も増えている。そんな中、なぜ清田はあえて2次からプロテストを受けたのか? 「トップ合格しても、何も特典はありませんが、普通の試合では味わえないピリピリした雰囲気を体験できたのが収穫でした。この経験が、これから始まるQTで役に立つと思ったからです」と清田。 さて、今回新たに導入が決まった実技免除だが、対象となるのは、PGAの会員外でシーズン終了時点の賞金シードを獲得した選手だが、PGAは「99年度から02年度までいずれかの年度で同賞金ランクによるシード選手となった者も対象とする」としているため、今井克宗、近藤智弘、矢野東、D・ウィルソン、T・ハミルトンらは、今季の成績如何にかかわらず、すでにその対象になっている。 99年のプロテストに落ちた今井は、00年にQT42位の資格でツアーに参戦、その年、賞金ランク70位で、日本人として初のプロライセンスを持たないシード選手となった。以来3年連続でシードを保持している今井は「PGAの発表を聞いたときにはビックリしました。ありがたい話ですが、今はシードのことで頭が一杯でどうしていいか考えられません。ツアープロとして技量が認められたと言っても、プロテストは一発勝負で別モノですから。PGAのライセンスは、昔は欲しかったですけど、今はツアープロだと割り切っていました。シーズンが終わってから、どうするか考えます」と、いささか戸惑い気味だ。 PGAのプロテストを一度も受けることなくシード選手になった近藤智弘は「ありがたいことだとは思いますが、僕はPGAの会員になるつもりはありません。大勢の人がテスト合格目指して頑張っているのに、賞金シードが獲れたからといって、その関門が免除されるのは、ちょっと納得できませんから」と辞退の構えだ。 プロテストに1度落ちている矢野東は「自分がテストに落ちているだけに、受けている人のことを考えると複雑な心境です。ツアーが休みのときにテストをやってくれれば、受けたいですけど。PGAのライセンスがあると、海外のゴルフ場などで待遇が全然違うんです」とPGAライセンスの威力を評価する。 また、今季このまま賞金シード獲得となれば対象者となる宮里優作も「複雑な心境ですね。先輩たちが苦労して通過してきた関門を免除してもらって『いいのかな?』と。希望するかどうかはシーズン終了後に考えます」とやはり戸惑い気味だ。 今回のこの発表、PGAとJGTOが、「これまでの確執を捨てて融和の方向に向かっている証拠」と見る向きもある。日本の2大プロ組織も、米国のUSPGAツアーとPGAオブアメリカのように友好関係を結ぶ日がやって来るのだろうか。