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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。

週刊ゴルフダイジェスト 11/4号
2003年更新
3年連続最終日最終組の東海クラシックで
ツアー初優勝した川原に直撃インタビュー
 東海クラシックで初優勝した川原希。今年で3年連続賞金シードを守ってはいるものの、これまではあまり表舞台に立つことがなかった。まず川原のゴルファーとしての足跡を紹介するとともに、初優勝時の思いを振り返ってもらった。

 川原は、伊沢利光や丸山茂樹を輩出した高校ゴルフ界の名門、日体荏原高校に入ってからゴルフを始め、高校卒業後に研修生となり、94年に4回目の挑戦でプロテストに合格するも、99年まではさしたる成績を収めていない。00年の日本オープンで予選会から出場した川原は初日・2日目と首位を堅守し、史上初の予選会組のオープン制覇かとの期待を持たせた。結果的には5位タイに終わったが、川原はこのとき、ゴルフを始めて15年目にして初めて表舞台に立った。次に話題を集めたのは今年の東海クラシックの3日目終了時、川原はこの東海クラシックで今年も含め過去3年連続して最終日を最終組で迎えることとなったのだ。01年は伊沢利光、02年は谷口徹に優勝を奪われ、今年も片山晋呉が1打差の2位に迫っていたことから「3年連続の悲運か」と話題となった。下馬評は圧倒的に「片山有利」だったが、見事これを跳ね返して優勝した。文字通り“3度目の正直”を達成した川原に、試合を振り返ってもらった。

-----東海クラシックの三好CCは相性がいい?

「まず時期的なことが大きいと思います。元来スロースターターで春先は調整で、秋口に漸くエンジンがかかる、それが東海クラシック辺りなんです。もちろんコースとの相性も悪くなく、ティショットのイメージが出しやすいですね」

-----でも、三好の16番はツアー開催コースの中でプロが最も嫌がるパー3。2打差の首位で迎えたとはいえ、さすがに嫌だったのでは……。

「左の崖下に落とすことだけは避けたかったので、右のバンカーを狙っていました。僕はバンカーは自信がある、大きく振っても飛ばない打ち方ができるんですよ」

-----でも、結果的にはあわや崖下に落ちるところでボギーとし、片山と1打差に。やっぱり失敗だったのでは……。

「バンカーに行ってみると、球は左足下がりで止まっていて、どうしても飛んじゃうライだった。あの状況であのショットが打てたことは成功だったと思っています」

-----プレシャーはなかった?

「最終日を迎えた時点で僕は、『これは晋呉の優勝パターン』と思ってましたから全然」

-----そういう人の良さが優勝をこれまで逃してきた原因との声もあるが……。

「確かに人が良いとか言われますが、それは関係ないと思います。今回も、僕はハナから晋吾が勝つと思っていたから変なプレッシャーがかからずに最後までやれた結果、優勝ができたわけですから」

-----では、最後まで全くのノープレシャーだった?

「いや、18番のセカンドショットで長いパットを残し、そのパットを打つ前になって急に変な緊張を覚え、『これがプレッシャーかな』って思い、ラインを見るふりをしてグリーン上を歩いて心を落ち着かせました。でも一番緊張したのは最後に残った50センチのパットでした。入らないのではと思う以前に、打つ前にヘッドがボールに当たらないかが心配だったんですけどね(笑)。でも、今振り返っても結果的にそんなに緊張はしてなかった。3打目が寄らなくて、3パットでプレーオフでもいいやって思ってましたから」

-----なぜですか?

「過去2年間、最終組で回っていながら、結局優勝争いにならなかったという思いがあって、今年は最後までやれたんだから、それはそれで満足だって思えたんです」

-----優勝後の記者会見で、お子さんに障害があるとお話していましたが……。

「今年の1月に自閉症と医師から言われました。2歳になっても喋れないんです。医師から言われ、これは『ゴールが見えない病気』であるとわかりました。でも、本当に可愛い。この子のためにも、家を守ってくれる妻のためにも、今回の優勝はせめてもの恩返しになったかなと」

-----日本シリーズに出られることになったわけだが、過去アジアンツアーを回っていたときにキャディを務めていた奥さんと一緒に回りたいとか。

「いや、やっぱり勝負の世界ですし、今回優勝したときに担いでくれたサイモンにお願いすると思います。僕がもっと力をつけたときには妻にキャディを頼むことになるかも、そのときまで楽しみをとっておきます」

*


 多くのプロが川原の優勝を祝福した。このインタビューを通しても、その人柄を分かってもらえたと思う。これからも勝負師としては“ぬるい”との声が聞かれるかもしれないが、人として素晴らしい、このゴルファーを多くの人は応援し続けるだろう。

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