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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。

週刊ゴルフダイジェスト 11/4号
2003年更新
中国人初のNBA選手で身長2メートル29センチのヤオ
USGAの長尺ドライバー規制で「困った」
 中国出身で初のNBA(米プロバスケットボールリーグ)プレーヤーで、昨年の最優秀新人賞に輝いた23歳のスーパースター、ヤオ・ミン(Yao Ming)。「歩く摩天楼」と言われる2メートル29センチの長身が話題を集め、テレビのCMなどにも出演する人気選手の彼がゴルフを始めたのだが、あることがちょっとした物議を醸している。

 NBAの選手というと、ゴルフ狂が多いことで知られ、大勢いるスーパースターの中で、なぜヤオのゴルフが話題になっているかというと、それは彼の身長のため。時も時、USGA(米国ゴルフ協会)が長尺ドライバーの制限を発表しようという矢先だからだ。

 USGAが、グラブヘッドと長尺ドライバーの制限に対する提案を行ったのが先の5月。すでに聴聞期間も終え、「具体的なことは言えないが、非常に近い将来、決定案を発表する。クラブフェースの振り子テストにはマイナーな変更があるはず」(USGAのテクニカルディレクター、D・ラギー氏)とのことだが、どうやら長尺クラブについては提案通りの48インチまで、クラブヘッド体積については470CCまでの線で決まりそうな雰囲気だ。となれば、来年のルールブックには、この数字が明記されることになるが、これに不満を抱いているのが、この「歩く摩天楼」。もっともヤオ本人は、クラブの詳しいことなどわかるはずもなく、苦労しているのは、ヤオのクラブを造ったナイキのスタッフだ。

 米ゴルフウィーク誌に、その苦労話の一部が紹介されたのだが、「ヤオの手の位置は、私のと比べても1フィート(約30.5センチ)も地面から高い位置にある。そんな人のクラブをどうやったら作れるんだ?」(ナイキ・ツアーショップマネジャー、B・ストックレイ氏)というわけだ。一般のゴルファーが、腕を垂らして、その指先から地面までの長さを図ると、平均的に71センチだとか。ところが、ヤオの場合は、なんと99センチ。USGAが採用するであろう48インチまでの長さのドライバーでは、まったくライ角度が合わないのだ。さらに、ストックレイ氏によれば、問題はシャフトの長さだけではなく、シャフトが長くなれば、クラブ全体の重量が重くなるほか、重量バランスやシャフトの耐久性に問題が出てくるというのだ。

 ちなみに、米ツアーではT・ウッズを始め、E・エルス、D・ラブ、V・シン、P・ミケルソン、J・フューリックらトッププレーヤーたちの身長は、皆188~190.5センチの圏内。それ以上の選手は約193センチ前後で、M・クーチャーやS・シンク、S・ジョーンズなど7名いる。やはり身長が高いほうが有利であることは間違いないようだが、193センチを超えるシード選手がいないのは、これ以上背が高くなると、現在の技術ではそれに合ったクラブを造るのが不可能であることを物語っているのではないだろうか。

「基本的に、ヤオほど背の高い人のクラブを作るのは不可能。彼がフルスウィングしているとき近くにはいたくないね。ダフったら、シャフトへの負担も大きく、折れてしまうこともあるからね」(前出・ストックレイ氏)

 実際、ヤオのアイアンは、通常より3インチ長いそうだが、耐久性(強度)を考えてスチールシャフトを使用している。その分「非常に重いけど、それは背の高い人間の宿命」ということになってしまう。

 つまり、USGAの長尺クラブに対する制限の問題点は、その長さだけの問題ではなく、メーカーが将来、軽くて丈夫な長尺のシャフトを開発するチャンスを奪ってしまったことにもなりかねない。USGAのクラブ規制の影響はさまざまなところに及んでいるようだ。

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