週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
タートルベイ選手権出場のためハワイに乗り込んだスティーブンソンを待っていたのは米メディアの取材攻勢。理由は、彼女のインタビュー記事が掲載された米ゴルフマガジン誌11月号が大会開催週の火曜日に発売され、その内容がアジア人選手を差別するものとして問題視されたからだ。 彼女の発言は、ここ数年、LPGAツアーの上位を占めているアジア人選手に関して、「こんなことを言ったら問題になるだろうけど、アジア人選手が女子ツアーをダメにしている。彼女たちは感情を持たず、英語も話せるのにしゃべらない。プロアマのときも、高いお金を払って出場しているアマチュアに彼女たちは『ハロー』と『グッバイ』しか言わない。試合でのプレー後もメディアの質問に答えることなく立ち去る」などと、強烈に批判している。 さらに「アジア人選手はアメリカのスポンサーが提供したアメリカのお金を稼ぎ取っている。本来、ツアーはアメリカ人選手のためにあるべきものなのだから、Qスクールもアメリカ人用と外国人用に分けて行ない、ツアー出場選手の60パーセントはアメリカ人、40パーセントは外国人とすべき」「結局、ベストプレーヤーは男子選手であり、女子選手ではない。だから、女子選手はもっとセックスアピールしてツアーを盛り上げるべき」など、LPAGツアーの在り方にまで批判的に言及している。 同誌が発売された直後、彼女の発言は米国内のTVキー局をはじめUSAトゥデイなど全国紙、インターネットで次々に報道された。当然、その発言内容は“標的”にされたアジア人選手たちの耳にも入った。 パク・セリは「ツアーにはたくさんの国々から才能ある選手が集まってきているのだから、ツアーはダメになるどころか、逆に良くなっている」と、また、グレース・パークは「彼女がアジア人のことを悪く言い、そして私はアジア人という事実は決して気分がいいものではない。でも、誰にも自分の意見があり、彼女は彼女の考えを語っただけ」(ともにAP通信)とともに冷静に反応している。 その一方で、LPGAツアーコミッショナーのタイ・ボートウ氏は「多国籍の選手が出場していることこそがLPAGツアーの最大の特徴。スティーブンソンの発言には、まったく賛同できない」と反論。この騒ぎ、どこまで拡大してしまうのだろうかと心配された。 結局、同週の土曜日、スティーブンソンは『アジア人コミュニティに対する謝罪文』をAP通信を通じて発表。 「インタビューで私がアジア人選手に対して語った言葉を、雑誌発売前に他の表現に書き直してほしいと編集者に頼んだけど、そのまま出てしまった。私は女子ツアーの発展を願って言ったつもりだったが、実際には人種差別と受け取られ、人々を傷つけたことを深くお詫びしたい」と記した彼女の謝罪文は、再び全米レベルのTV、新聞で即座に報道され、この問題はひとまず解決したようだ。 実は、LPGAツアーでは、今年8月にも韓国人選手に関する騒動が起きている。 「韓国人選手に連れ添っている家族が、選手の球をラフから蹴り出したり、韓国語でプレー中にアドバイスを送っている」などといった内容の記事が、選手の実名を伏せた上で米ゴルフワールド誌に掲載され、LPGAツアーは韓国人選手だけを集めたミーティングを開き、異例の事情聴取を行なっている。 韓国人、アジア人に限らず外国人選手が上位を占めていることがLPGAツアー人気の低迷につながっているという意見は米ゴルフ界でよく聞かれるが、それならばこそ、本当に求められるのは外国人批判以前に、上位の座を奪い返すアメリカ人選手の実力であるべきだが……。