週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
事の発端は昨年、JGA(日本ゴルフ協会)が発表した「GOLF21」というレポート。近未来の業界の厳しい予測に警鐘を鳴らしたもので、それが経済産業省の目に止まり、同省の音頭で検討会が発足。JGA、NGK(日本ゴルフ場事業協会)、JPGS(日本パブリック事業協会)、JGGA(日本ゴルフ用品協会)、JGRA(全日本ゴルフ練習場連盟)の業界5団体も委員を出し、この3月まで活発な議論がなされてきた。 委員の1人でもある経済産業省の熊谷敬・商務情報政策局サービス産業課長は、今回の報告書の特徴について、「業界の危機感を背景に、単なる状況分析ではなく、具体的なアクションプランに踏みこんだ内容になっている。また、今月中には、将来的に業界の司令塔となる“ゴルフ市場活性化機構”の準備委員会を発足させるなど、具体的かつ行動的な提言になっている」と話す。 同機構は、アメリカにおける「米国ゴルフ財団」(NGF)をモデルとしたもの。NGFはゴルフ界、スポーツ関連企業約500社から集めた基金で、1936年に設立、ゴルフ界最大のシンクタンク機能を有し、ゴルフ関連の各種調査、ゴルファー育成指導プログラムの研究開発などを行っている。 委員のひとりである、JGAの大森孝専務理事は、「大がかりなプロジェクトで、具体的なことはまだこれからだが、とにかく行動を起こすことが重要。これまで業界団体がバラバラな印象もあったが、ゴルフ場利用税の廃止運動やゴルフ100年祭での業界団体が共通認識を持ち、共同歩調で難題に取り組んできた経験を活かし、業界の司令塔となるべく“日本版NGF”の創設を目指したい」と話す。 それにしても報告書は、業界の置かれた厳しい現実を容赦なく指摘している。これまでゴルフ業界の不振は、バブル崩壊後の景気低迷が主原因と言われてきたが、92年に2兆8860億円を記録しピークを迎えたゴルフ関連市場(コース、練習場、用品等)の売上げは、01年には2兆460億円に縮小。 とくにゴルフ場市場は約30パーセント減、ゴルフ練習場市場は約40パーセント減、ゴルフ用品市場は約27パーセントと大幅な縮小を見せている。しかし、この間、国民総生産は10パーセント、雇用者所得は8パーセント、民間消費支出は11.5パーセント増で、一概に景気低迷が原因とも断言できず、業界の構造的な問題であることを指摘。さらに50代のゴルファーこそ増加しているものの、40代以下は軒並み減少、とくに20代はピーク時の3分の1にまで減少しているとしている。 また01年、年間でのゴルフ場延べ利用者人数は9017万人だが、現状のゴルフ場利用率を維持しても、人口の減少などで2030年には8508万人に減り、利用率が下がれば7493万人から、最悪の想定では6554万人まで激減する、とも指摘している。 そうした分析を踏まえ、各世代別・男女別に、たとえばシニアゴルファーのリタイア率を30パーセント以下に抑える、女性ゴルファーの参加率を2.5パーセントから4.5パーセントに拡大させる、ジュニアの参加率を1.4パーセントから2.1パーセントに拡大する、既存ゴルファーの年間平均プレー回数(現在7回)を2010年7.5回、2020年8.0回、2030年8.5回と漸次引き上げていく等々、実現可能な目標を試算している。と同時に、シニアなら夫婦共楽型ゴルフの創造、ジュニアならクラブセットの貸与など、それらの目標を実現するための様々なプログラムも提案している。 衰退したとはいえ、ゴルフ業界は2兆円産業。1億人こそ割れ、ゴルフ場に出かける人も9000万人超いる。これはスポーツ界では最大で、産業としても発展の余地を残している。それだけに報告書の提言に対する今後の取り組みによっては、日本経済復活の起爆剤になるかもしれない。