週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
「PGAツアーでは、多くのプレーヤーたちが、ヨガで汗を流している」と語るのはT・レーマン。ヨガをトレーニング・プログラムに加えているのは、米ツアーではA・バデリー、C・ベック、D・デュバル、B・ファクソン、D・ゴセット、A・マギーら。LPGAではA・ソレンスタムやJ・インクスター、シニアツアーでは、G・プレーヤーやG・マッコードなど数え上げたらきりがない。 しかも「ヨガ・フォー・ゴルフ(ゴルフのためのヨガ)」というプログラムで、この分野のトレーナーとしてはトップに立つキャサリーン・ロバーツ氏に言わせると、T・ウッズもトレーニングにヨガを加えている可能性は高いとか。 もっとも、ヨガといっても、インドのヨガ修行僧のような、激しいものではなく、そのエッセンスを取り入れたストレッチ、柔軟体操に、呼吸法や集中法を加えたようなもので、誰にでもできる。 米国のスポーツ界では、NBA(プロバスケットボール)のニューヨーク・ニックスやロサンゼルス・レイカーズもヨガを採用、ゴルフでも「キャサリーンと過去数年、(ヨガに)取り組んできて、体が軽く感じられ、より高いレベルで戦えるようになった」と、シニアのG・マッコードが語るように数年前から注目され始めていたが、今年に入り、米ゴルフマガジン誌やゴルフチャンネルなどマスコミで紹介され、一気に注目されるようになった。 さらにデュバルなど、筋力トレーニング一辺倒だった選手が、その失敗に気付き、ヨガ・プログラムを取り入れ始めるなど、ある意味、筋力トレーニングの反動として、ヨガに熱い視線が送られるようになったのかもしれない。 いずれにしても「ゴルフはヨガのように、心と体を一体にしたもの。強さと柔軟性、そしてメンタル面のコントロールという3つの要素のコンビネーションについてなら、ヨガを超えるものを見つけることはできない」とロバーツ氏が語るように、ヨガがゴルフのトレーニングに合っていることが、新たにアメリカで認識され始めたということだろう。 具体的には、たとえば呼吸法は「ヨガ・フォー・ゴルフ」の第一歩。胸の横隔膜で呼吸する方法を覚える一方、呼吸を意識し、静かで、深くゆっくりしたリズムで呼吸をすることによって、筋肉に送る血液の流れを一定にする。これにより、緊張をなくし、平常心でプレーできる一方、その呼吸のリズムをスウィングのリズムやタイミングに結びつけるというのが「ヨガゴルフ」の基本だ。 そして、そうした呼吸法を覚えるために、胸を大きく広げるストレッチ運動をして、横隔膜をより簡単に広げることを覚え、さらには、背中の筋肉の柔軟性を高め、スウィングする際の回転をしやすくするといったメンタル面とフィジカル面を一体化させた総合的なトレーニングを行っているのだ。加えて、体の柔軟性を高めることで、ゴルフによる故障や怪我なども少なくなるというのだから、いいことずくめ。どこまで効果があるかは定かでないが、確かにマッチョよりも体の柔らかい人のほうが、ゴルフに向いていると言われているのも事実。 日本人には、お馴染みのヨガだが、アジア的なメンタル・肉体トレーニングが、米ツアー界で、活用され、話題になっていることは注目に値する。