週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
弊社調べによれば、完全キャディ制を堅持しているゴルフ場は全体の3割程度。残る7割は完全セルフもしくは併用制で、年間9000万人弱のゴルフ場利用者の半数以上はセルフでプレーしているものと推測される。ならば、国内で達成されるホールインワンも、半分はセルフでのラウンド中に生まれる計算になる。 エース達成者にしてみれば、喜びはキャディが付いていようがいまいが関係ない。同じように天にも昇る気分になり、同伴者などに宴を振舞い、記念品配布までも考える。どっちにしたって大変な出費である。それをカバーしてくれるのがホールインワン保険、のはずだった。 ところが、この保険金の支払い。昨年10月に三井住友海上火災が改訂するまでは、セルフプレー中のホールインワンには一切認められていなかった。 それを同社が、セルフプレーであっても、(1)ゴルフ場従業員が目撃し、その署名捺印があるとき。(2)ゴルフ場が主催・共催する(月例などの)公式競技において(そのゴルフ場の)会員が達成した場合で、目撃した競技参加者や競技委員の署名捺印があるとき。(3)ビデオ映像等、同社が認める客観的な証明資料があるとき(~以上要約)は、支払い請求に応じることにした。この改訂後、すぐに(1)の条件による請求が1件あったそうだ。 その他の保険内容や保険料に差がないならば。同社のゴルファー保険に入った方が、いざというときに泣かないで済む。このことが保険契約者の動きにどれほど影響したのかはわからないが、その後、他の損害保険会社が続々とこれに追随した。他社の条件もほぼ同じ。いわゆる横並び、というやつである。 「それは仕方のないところ。うちが開発した商品がきっかけで、多くのゴルファーの皆さんが喜ばれる状況になったのですから満足しています。今後も契約者の方に喜ばれる新商品を開発していきたいですね」(三井住友海上火災・広報担当者) 損保業界に限らず、消費者の目を引く商品に他社が追随するのは当然の成り行き。この1年間で、ホールインワン保険を扱う国内15社のうち10社にまで増えていた。難しい条件付きではあるが、もはや「セルフプレーではホールインワン保険は下りない」時代ではなくなったのだ。 しかし、実際にセルフプレー中でのホールインワン申請は増えているのだろうか? コースの従業員が目撃する確率は低いし、ビデオが設置されているコースも2、3カ所あると聞くだけ。ホールインワン保険の草分けで、1年前ほど前から同様の条件に緩和した共栄火災海上のよれば、「申請に対し、どういった方が証明する署名があるのか、1件1件調べる体勢にはなっていないので正確にはわかりません。ただし、セルフでの申請であれば担当者が話題にするでしょうが、そうした評判はまだ聞いていません」(広報担当者) 先の三井住友の広報部も同様の答えで、どうやらその後、続出しているわけではないようだ。また、「新規の保険加入でも特段目立った動きは認められません」(同社広報部) 担当者によれば、喜ばれたことは確かだが、ゴルファー保険選びは、賠償責任や自身の傷害、用品の損害に対する補償が眼目であって、ホールインワン保険はいわば二の次。すぐ大きな反応につながるものではないようだ。 “事故”というものは、我が身に降り掛かるまではなかなか真剣に考えられないもの。それでも「万が一」は誰にでも起こり得る。せっかく、一生の記念になるエースを出しながら、契約する保険会社から「セルフプレーの場合は認めていないから保険は下りない」などと言われ、愕然とする前に、これから加入しようと考えている人、すでに加入している人も今一度、保険の契約内容をチェックしておきたいものだ。