週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
というのも、出場プロ選手(30名)全員が賞金の5パーセントを寄付し、さらには日本プロゴルフ協会も、競技開催に際して大会運営協力費として本来受け取る協力金50万円を寄付するという、プロも協会もこぞってチャリティに主体的に関わるという異例の試合だ。寄付金は協賛金やチケットの売り上げの一部とともに、兵庫県、神戸市、三木市、京都府、京都市の福祉課を通じて寄付され、身体障害者の福祉向上に役立たせるという。 実はこの大会開催の仕掛け人は、4年連続シニア賞金王に輝いた高橋勝成だ。 「社会に貢献できるチャリティ的なシニア競技を開催できないか、いろいろ案を練っていたところ、(タクシー会社の)エムケイさんをご紹介頂いたんです。出場するプロも、快くチャリティの主旨に賛同して頂いていた方ばかりです」(高橋) ちなみに、高橋を始め、新井規矩雄、海老原清治、杉原輝雄、中村通、山本義隆ら有名選手が出場予定。 ところで、主催者のエムケイとは、ご存知の方も多いと思うが、京都に本社を置き、今や全国の大都市圏に進出しているタクシー会社。従来横並びだったタクシー料金を、日本で初めて運賃値下げ申請したり、名古屋で無料タクシーを運行した際、陸運局から認可が下りず、訴えを起こすまでに発展。新聞紙上を何度も賑わせてきた有名な会社でもある。 「低料金とか、さまざまなサービスも社会に対する当社のチャリティ精神の表れですが、実は、30年以上も前に、日本で初めて“身体障害者優先乗車”を実施したタクシー会社なんです。つまり、車椅子に乗った方が手を上げたら必ず止まるということを打ち出したのです。当時は、ほとんどの交通機関で、車椅子に乗った方の乗車拒否が当たり前のように行なわれていた時代です。その後の、身体障害者への世の中の取り組み方が変わったのも、当社が先鞭をつけたと自負しております」(東真一・MKチャリティシニアオープン事務局長) つまりは、弱者に対するチャリティ精神が根本にあり、同社の青木信明代表取締役社長も「会社も私もほとんどゴルフとは縁がなく、高橋プロからお話があったときも、チャリティ的な要素がなければお引き受けしなかったでしょう。当然、運営も、当社の特徴を活かしたチャリティ精神に則ったものを心がけています」と話す。 一例を挙げると、事前に募集した身体障害者約20~30名につき、付き添い2名を含めた3名を自宅からコースまで同社のタクシーで無料送迎(原則として京都市、神戸市、三木市在住)。身体障害者や知的障害者の療育手帳持参のギャラリーは無料……といった具合だ。 「賞金額は大きくないですが、今回の経験を踏まえ、来年以降の大会をより充実したものに発展させていくつもりです」と青木社長。そして、高橋も「このような、チャリティを通して社会に還元できるシニアの大会を、プロも協力するという形で根付かせていきたい」と語る。 さて、プロ、プロ協会、主催者と三位一体となったチャリティ精神溢れるこの大会、どういったものになり、どんな反響があるのか、大いに注目である。