週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
大口債権者だったRCC(整理回収機構)主導で、日本ゴルフ振興(株)及び系列4社が民事再生法を申請したのは今年2月のこと。系列国内28コース(海外4コース)、会員数8万8100人、負債総額約3602億円(日本ゴルフ振興(株)単体で約3322億円)の大型倒産として話題を集めた。RCCにとっては、ちょうど新たに再生機能を備え始めた時期で、当時、RCC大阪支社では「一定の債権を放棄しても、事業継続により債権回収が可能であり、当社の再生機能を使う条件を満たしている」とし、一昨年、オーナー排除を目的にスポーツ振興に対しては強硬に会社更生を主導したのとは対照的に、二人三脚での法的整理を強調していた。それだけに、民事再生は順調に進むと思われていたのだが……。 債権者とさらに協議したいとして、再生計画案の提出期限を来年1月末まで延長し、裁判所の許可を得たのが10月。背景には民事再生手続き中に、RCCから徐々に債権を買い取ったローンスター・グループが約44パーセントの債権を持つ大口債権者になったことがある。会社側が練り、ローンスターを始め債権者の説得にあたっていた再生計画案とは、九州・沖縄地区は福岡シティ銀行及び地元企業、四国地区は愛媛銀行及び地元企業、残る地区についてはローンスターがスポンサーになるという“分社化”案。しかし、ローンスターは大口債権者として、あくまでも自社1社によるスポンサーでの、再建にこだわった。 この点について、日本ゴルフ振興の民事再生法の申請代理人の宮崎誠弁護士は「分社化では、複数のスポンサーによるニューマネーが期待でき、これが債権者への高い弁済にもつながる。ローンスターはスケールメリットを理由に1社での再生を希望するが、ローンスターのメリットであっても、債権者のメリットになるとは限らない」とし、裁判所に主張してきた。 ちなみに会社側の想定していた分社化による債権者への弁済率は2パーセント強だったが、「ローンスター1社のスポンサーでは、その何十分の1か何百分の1になる可能性もある」(宮崎弁護士)とも話した。 これに対し、会社更生法を申請したローンスター側の代理人、藤原総一郎弁護士は「そもそも民事再生の大前提は一体再建で、分社による再建は(地元金融機関など)一部債権者に配慮したもので、合理性に欠け、また会員のためにもならない。すでに我々は50パーセント強の債権者の同意も得、それを裁判所に提出しており、今回の保全管理命令は我々の主張が認められたものと理解している」と主張する。 気になる会員のプレー権については、新たな出資金を求めずに保証する方針。また、会社更生に移行することで、大西社長以下、現経営陣は退陣することになるが、これは民事再生計画でも、見通しがついた適当な時期に辞任する方針となっていた。そのため外資であるローンスター主導の再建に抵抗感を持つ会員はいるにせよ、さほど大きな混乱はないと予想される。 さて、このまま会社更生が進めば、この28コースを含め、ローンスター傘下のゴルフ場は、内定段階の所も入れて78コースとなり、現在辛うじて国内最大グループの座を保っている西武系の46コースを一気に抜くことになる。その一方で、ゴールドマンサックス・グループも現在所有の34カ所に、スポンサーに決まっているスポーツ振興グループの26コースを加えると60コースに。さらに民事再生中の緑営グループも加えると79コースとなる計算だ。いずれにせよ、もはや外資が国内の最大ゴルフ場グループになるのは時間の問題で、近い将来この2社の激しいデッドヒートが繰り広げられることは間違いない。 両グループが標榜していた「2~3年後には国内100コースを運営」が早くも現実のものとなりつつあるわけだが、外資であれ、国内の会社であれ、最終的に、会員を含めた一般ゴルファーにとって良いゴルフ場になってくれればよいのだが。