週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
先ごろ、日本ゴルフ場事業者協会から02年度(02年3月~03年2月)の全国ゴルフ場の延べ利用者数が発表された。その数は前年度比1.96パーセント減の8840万9425人で、2年ぶりに9000万人を割込み、ピーク時と比べると14パーセント近い落ち込みとなった。また、1コース当たりの利用者数も前年度比2.28パーセント減の3万5939人で、この数はなんと1979年度の水準まで遡ることになる。03年も全国的な冷夏になったこともあり、好転の兆しは見られない。 4月には満70歳以上など、一部利用者の利用税非課税が実施され、その申請手続きも徐々に簡素化され、使いやすくなった(12月1日、総務省が証明書コピーの不要などの簡素化を都道府県の担当者に事務連絡)が「非課税といっても標準税額800円。これまでにも毎年のように1000円、2000円と割引きしてきたじゃないですか。800円程度で集客効果は望めないでしょう」(東京都ゴルフ場連盟会長・森川孝志氏) もともと非課税対象者の絶対数が少ない措置。やはり、待たれるは利用税の完全撤廃だが、日本ゴルフ協会関係者は「国会では地方への税源委譲が論議されている最中。そこに利用税廃止の要望は時期が悪すぎ、議論の俎上にも上らないのでは。04年は国会議員の先生方に理解を求める地道な運動を続けることになると思う」と見通す。 ところで、今年は貴重品ロッカーなどで頻発した窃盗と、昨年の道交法改正を受けての飲酒自重(パーティの自粛)が話題になった年でもあったが、後半にはともに改善の動きが見られた。各ゴルフ場で防犯カメラを設置するなど対策が講じられ、従業員の防犯意識が徹底されてきた。例えば、市内に32コースを擁する千葉県市原市では、地元警察署とゴルフ場団体(市原市ゴルフ場連絡協議会)の間で「地域安全に関する覚書」を締結。通称「IPG(市原・ポリス・ゴルフ場)ネットワーク」と呼ばれる情報・連絡網を設け、防犯に効果をあげている。 ゴルファーの飲酒運転回避は、ゴルフ場にとってはパーティの自粛による売上げの減少という深刻な影響を及ぼした。関東地区のあるゴルフ場関係者によれば、一時は月当たりのパーティ数が前年比50パーセントにまで落ち込んだと振り返るも「最近は減少分のほぼ60パーセントは回復。回復傾向はまだ続くと思います」と語る。 ノンアルコール飲料の普及がパーティ復活につながったのだろうか。 さて、残るは最大の問題、入場者数の低迷だが、ここでも従来はなかった「提携」という形で回復の道を探ろうとしている。地域のゴルフ場が提携してのスタンプラリー(決められた数のコースをプレーすると特典が与えられるサービス)は、今年全国的に広がった。九州では、国内にとどまらず、宮崎県と韓国のゴルフ場の間で会員の相互利用という提携が実現。他にも、韓国や香港・台湾との提携を進める「アジア友好ゴルフ連盟」という12コース加盟の団体も誕生した。 「ゴルフ場は、もう閉鎖的な運営では生き残れない。業界が連携して盛り上げなければ、という意識が浸透してきました。提携コースをもっと作って欲しいと要求する会員さんが増えて困ると嘆くコースもあるようです」と内情を語る支配人もいる。 また、業界を挙げての活性化も盛んになってきた。日本ゴルフ協会や男女プロゴルフ協会などの関係団体が協力し、日本ジュニアゴルファー育成協議会「キッズゴルフ・プロジェクト」が発足。業界を挙げてジュニアへの普及を始めた。もはや「景気が戻れば……」といった外部任せの回復に頼ってはいられないことは確かなようだ。