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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。

週刊ゴルフダイジェスト 2/17号
2004年更新
キャスコの公認球が一転、初速違反で取消
製品回収へ、逆に「飛ぶ」とのPR効果?
 一度、ルール適合となったものが一転、不適合になった! なんていう書き出しをすると、ここ数年来、話題を集めている高反発ドライバーの話だと思う向きも多いかもしれない。しかし今回、異例の公認球資格取消の損害?(恩恵?)を受けたのはなんとボールなのである。

 ゴルフボールには、クラブと違い、R&A(ロイヤル・アンド・エンシェント)が公表する認定球リストなるものがある。毎年新しいリストが出るのだが、一度テストに合格したボールでも、最低1年ごとには更新のためのテストを受けなければならない。しかし、テスト方法は変わらないので、本来は一度合格すれば、それが取消されることはない“はず”である。

 ところが今回、昨年春から発売されているキャスコの4ピースボール、「シリコンパープル」というモデルが公認球リストから取り消された。反発性に非常に優れたシリコン素材を、同社が世界に先駆けていち早く内部に取り入れた「シリコン」シリーズ(5種類)のひとつだ。

 昨年2月にR&Aの公認を取得、1年間の有効期間が切れる前の昨年12月、(R&Aの委託によりテストを行う)米国ゴルフ協会(USGA)に審査のため再度提出。ボールのテストは、重量、直径、飛距離、初速などが測られるわけだが、今回のテストでは初速面で基準を超えた。ある意味“飛びすぎ”のお墨付きをもらったというわけだ。

「1月21日にR&AからFAXで『シリコンパープル』が初速制限の250f/s(76.2m/s)+2パーセントのルールをオーバーしたので公認球として認められないとの連絡が入りました」と話すのはキャスコのボール開発チーム商品企画担当チーフの渡部洋士氏。

 そのため、同ボールは2月4日に更新される公認球リストには掲載されず、このボールで公式競技に出ると失格となってしまうことに。

 では、このような、本来あり得ないことが、なぜ起こってしまったのか?

「ボールの初速テストは、48m/sのヘッドスピードで打って測るのですが、厳密には1モデルに対し、全部で24球をUSGAに提出して、12球を2回に分けて行います。今回は最初の12球はクリアしたのですが、残りの12球のうち何球かが基準をオーバーしてしまったようです。ある意味、弊社では少しでも飛距離の出るボールを追求してギリギリのところで勝負しているため、誤差が出てしまったということしか考えられませんね。もちろん提出前に、当社のテストではクリアしていたのですが……。疑問は残りますが、致し方ありません」と渡辺氏。

 とはいえ、同社では「弊社の品質管理ミスによってこのような事態を生じさせたことに関し、関係者及びユーザーにお詫び申し上げます」としたうえで、即刻、“公認球資格取消”の告知を販売店に配布、「ルールの尊厳を守る」という同社のポリシーに則り、販売店からは製品を回収、また、すでに購入したユーザーが所有する未使用の「シリコンパープル」については、取扱い販売店で代替商品と無償交換するという対応を取るハメになった。

 同社のスタッフはさぞかし、落胆一色だろうと思いきや、これがどうやらそうでもない。実は、今回、公認取消を告知した販売店から、何百ダース単位で「ウチにも回してくれ」と、すでに製造中止が決まったこのボールを巡り、水面下で激しい争奪戦が繰り広げられているのだそうだ。つまり、少し前の、高反発ドライバー競争で、USGAのルールに不適合となることが「飛ぶ」ことの何よりのPRになったのと同様の効果が表れているのである。

 実際、ここ10年くらいは聞かないが、過去にはブリヂストンの「ニューイング」、あるいはキャスコ自身が世界初の3ピース構造として出した「DC432ソフトインパクト」など、いったんは検査に合格しながら、発売後に不適合となったボールがチラホラあった。そして、それらの多くは、その後「飛ぶ」というイメージが浸透したこともあって売上げを伸ばしたという経緯がある。

 ちなみに、この「シリコンパープル」は、5タイプの「シリコン」シリーズの中でも、もっともヘッドスピードが遅いゴルファー向けのボールで、おもに競技志向の女性ゴルファーにユーザーが多いそうだが、ヘッドスピード35~40m/sのゴルファーが対象というから、世の多くの男性諸氏にも十分武器になり得るボールだ。

「実は、今回の公認取消を受け、初速制限にきちんと通る改良版の『シリコンパープル』をすでにUSGAに提出済みです。3月か4月には公認を頂け、近いうちに発売できるようになるでしょう」(同社・マーケティング企画グループ販売促進担当、生西正幸氏)

 果たして“ルール違反効果”が奏功し、大ヒット商品に大化けするのだろうか。

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