週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
GDPの発表に先立ち、総務省統計局から昨年の消費者物価指数(2000年の物価を100とする)が発表された。ゴルフプレー料金も調査対象になっており、毎年同料金の変動が示されるが、昨年の全国指数は88.2ポイント、前年比1.5パーセントの下落であることが分かった。依然デフレではあるものの、下落幅は一昨年(92.8ポイント)の7.2パーセント減、昨年(89.5ポイント)の3.6パーセント減と比べると明らかな減速、脱デフレの傾向を示している。 ゴルフのプレー料金は、ここ2年ほど「ハンバーガー」や「牛丼」と並んで、デフレの象徴と言われていた。しかし、ハンバーガーと牛丼はとうに安値競争を終え、バリュー(買い得)感を競いあっている(ただし、牛丼は目下姿を消しているが……)。同様に、プレー料金の値下げもそろそろ底を打ち、次の競争のステージに移ろうとしているのだろうか。 まずは、値下げに関して、現場の声を聞いてみた。「県内ゴルフ場の料金の情報は常に耳にしていますが、確かに値下げの話はもう聞かなくなりましたね」(千葉県ゴルフ協会) 「多くのゴルフ場でリストラが完了し、低コスト体質に変わったからだと考えられますね」(ゴルフ場経営コンサルタント・菊地英樹氏) その結果、ゴルフ場にプレーヤーが戻ってきているのなら問題はないのだが……。先の千葉県ゴルフ協会の関係者は「GDPの発表では個人消費も改善されたとのことですが、ゴルフ場に関しては回復の実感はまだありません。レジャー部門の回復は一番後回しになるんでしょうね」と、正直な思いを語る。 だが、今年に反転の可能性を指摘する専門家もいる。ゴルフ会員権アナリストの安蔵誉氏もそのひとりだ。 「昨年の7月以降値上がりを続けている会員権相場に加え、株価、景気指数等の動向から判断して、今年は入場者が増加に転ずると考えられます。ただし、3大都市圏で2~3パーセント増。地方都市圏で横ばいから1パーセント程度の微増。その他の地区での増加は難しいと思われます」 実は、今月9日に経済産業省から発表された「特定サービス産業動態統計調査」では、経済産業局のある大都市~地方中核都市周辺の約220コースが調査対象になっているのだが、そこでも、春先の降雪が影響した前半を除き、昨年6月以降は、ゴルフ場入場者数がすべて対前年比プラス(営業日数で調整後)となっており、安蔵氏の予測を裏付けている。なお、同調査による昨年1年間の入場者数でも0.1パーセントとわずかではあるが対前年比増で回復傾向を示している。 しかし、安蔵氏は次のようにも指摘する。「増加といっても、個別に見れば、現状でも入場者数に格差が生まれていますが、今年はその格差がより拡大する可能性が考えられます」 たとえゴルファーが戻ってきたとしても、ゴルフ場は一律にその恩恵を受けるわけではない、ということである。いわゆる2極化であるが、それを分ける大きなカギは、やはり「バリュー感」なのだろう。前出の菊地氏も「これからは料金値下げよりも、ゴルファーに喜ばれる付加価値をいかに実現し、サービスするかが集客のポイントでしょうね」と断ずる。 例えば、乗用カート・セルフプレーによる低料金化が完成した現在は、ナビゲーションシステムという高付加サービスの導入で集客を図る。あるいは、エバーグリーンで、他所との差別化を図るといった戦略が、これからのポイントというのだ。 実際、かつて菊地氏のもとには「リストラ」、「低コスト化」を求める相談が主だったが、ここ2~3年は「高付加価値」がコンサルタントの中心テーマになっているという。「脱デフレ」=単なる値上げではない。ゴルフ場の脱デフレは、ゴルファーにとっては案外楽しみなことかも知れない。