週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
ナノテク素材では現在、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンの開発が進められている。このうちフラーレンは、マルマンがチタンに混ぜ「フラーレンチタンボディ」として、先週6日発売の「エキシム・ナノ」ドライバーに採用。また、カーボンナノチューブはミズノが「MP-001」のヘッドのクラウン部分とシャフトに採用。ともに強度や耐久性のアップを謳っている。 ところが、この7月に1本25万円程度での発売が予定されている「ナノチタン・ドライバー」が掲げる性能は、従来の常識をくつがえす。「フェース厚0.5ミリ」「反発係数0.97」「一般的なゴルファーのスウィングスピード41m/sで、飛距離50ヤードアップ」、さらには「20パーセントの飛距離アップを保証。期間限定で、全額返金付き」……、どれもこれもにわかには信じかねる性能ばかりだ。 「そうですよね。いきなりこんな広告出したら、誰だって胡散臭く思いますよね」と笑うのは、開発した(株)イーアンドエフの谷本俊雄社長だ。社名を聞いてもピンと来ないだろうが、「RYOMAゴルフ」のブランド名で、フニャフニャしたシャフトの練習器具「スウィングプロ」や、柔らかなシャフトの「RYOMAパター」を開発、販売している会社である。 同社は谷本社長がベンチャーで興したもので、ゴルフ用品に進出したのはわずか2年前。もともと新素材の民生品開発に当たっていた同氏が、たまたま着目した素材のゴルフ用品への使用を企画してからのこと。 今や「マキシマ」という超高反発(COR0.87)のチタンドライバーを発売(今月14日)するまでになったが、素材研究をしてきた谷本社長によれば、チタンドライバーの飛距離アップは2年前の段階ですでに限界に来ているという。 それゆえ、チタンという同じ土俵に上っても、大手の圧倒的なブランド力には勝ち目はない。ならば、まったく新しい素材を見つけるしかない。そこで探し当てたのが、カーボンナノチューブを研究している、ある公的な研究機関だった。 同機関側にとっては、素材開発はできても、用途先が見当たらない時期で「渡りに船」だったのだろう、さっそく谷本社長側と共同開発することになった。そして生まれたのが、今回の「ナノチタン合金」で、カーボンナノチューブを網状に組んで、チタンと融合させた新素材なのだという。 「クラブヘッドに求められる、硬さ、割れにくさ、伸び、そして元に戻る、という相反する4要素の強度を表すヤング率では、従来のチタンの2倍以上あります」(谷口社長) その結果、ロフト角11度と13度のドライバーのフェース厚は、わずか0.5ミリ。従来チタンの最薄フェースはせいぜい1.9ミリで、しかも耐久性に不安があるとも言われるだけに、いかに薄いかがわかるだろう。 現在は、試作クラブでのスウィングロボットでの飛距離テスト、耐久テスト(約5万発)、打感や打撃音(未調整では、とてつもない爆発音を発するそうだ)などの調整を終えた段階。 「今月中に新たにデザインしたクラブを試作。クラブ用品の共同開発者でもある金谷(多一郎)プロに渡して、細かな調整を加え、7月に販売する予定です。ただし、その前の5月に、共同開発の研究機関とともに、このナノチタン合金の記者発表を行います」と谷本社長。 さて、無事完成し、販売に至り、これらの性能が実証されれば、ゴルフ用品界に革命を起こすことは間違いない。確かに待ち遠しい! しかし、急いてはいけない。RYOMAは一日にして成らず?