週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
全出場選手の平均ストロークが4日間の平均は73.648という日本オープン並みの争いとなった開幕戦。ロースコアの戦いとなったのは強風のためで、特に2日目には最大で17.1メートルに達するほどの強い風がコースを吹き荒れた。最終日に風は弱まったものの、連日の強風と晴天によりグリーンが乾き締まってきたことが選手を悩ませ、伊沢利光は「オーガスタのグリーンと同じ硬さと速さだった」と今回のグリーンの難しさを評した。 そんな厳しい条件下で優勝したのは藤田寛之。C・ウィ(韓国)に1打差をつけられて迎えた18番で藤田は、5メートルのやや上りのスライスラインを入れバーディ。対するウィはセカンドショットをグリーン左奥に外し1メートルの下りのパーパットをも外し、藤田が大逆転優勝を果たした。 ------18番のバーディパットの時の心境は。 「ウィが1メートルのパーパットを外すとは思えなかったので、とにかくこれを入れてプレーオフと考えた。正直言ってすごい緊張感が襲い震えて“手が他人のモノ”のようだった。強かったが、ショートだけはしたくなかった」 ------震える手でよく5メートルを打ちきりましたね。 「95年のよみうりオープンで、入ればプレーオフに残れるというパットを打ちきれず2位になっている。『もっと打てよ』というギャラリーの声が聞こえ、辛い思いをした。その時、もし同じような場面にきたら絶対にショートだけはしたくないと思った。 ------優勝の感想は。 「ジャンボさんのように、ギャラリーが『ここでやって欲しい』という時にやってのけるプロになりたいとずっと思っていた。今日は18番でのギャラリーの『頑張れ』という声援に応えることができたので、達成感があった。この経験はかなり自信になると思う。こういう大逆転は視聴率も上がると思うし、多くのみなさんに見てもらいたい」 ------今後の目標は。 「自分は飛ばし屋ではないのでショットの精度を高め、違う道で生き残らないといけないと考えている。海外に出てゴルフのステップアップを図り、意識を変えていこうと思う。米ツアーで戦う丸山茂樹くんや田中秀道くんのことを羨ましいと思うこともある。この優勝で米ツアーの最終クォリファイへの権利もより具体的に見えてきたと思う」 今回のギャラリー数は最終日に1万人を越えた。JGTOの島田幸作理事長は「今年の男子ツアーのテーマは『スポーツ』。他のプロスポーツと比べてスポーツらしくないと言われるゴルフだが、よりスポーツらしいエキサイティングなプレーでアピールしていきたい」と今年の抱負を語った。今回の藤田の大逆転優勝で、女子とは一味違った盛り上がりを見せたといえる。