週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
この問題は、本誌でも過去2度に渡って報じてきたが、今回の地裁決定でようやく問題解決に向けて動き出すことになる。 同GCの経営会社・(株)木更津ゴルフ倶楽部(以下、KGC)は、日経グループ70パーセント、地主の内房産業(株)(以下、内房)30パーセントの会社で、歴代社長もすべて日経出身者。ゴルフ場の収入はすべてKGCに入るが、問題を複雑にした最大の原因は、総額77億円の預託金証書の発行会社がKGCではなく、日経の資本が一切入っていない内房だったこと。内房は自社所有分の土地、自社名義のクラブハウス等を一括してKGCに賃貸、KGCから賃料を受け取る大家の立場。内房側の代理人弁護士も「コース施設の所有、経営、預託金の預り証の発行という、本来は1社で担うべき役割が、いびつな形で2社に分かれている」と評すほど珍しい経営形態だ。 同GCでは数年前から預託金の償還請求が起こり始め、当初は内房の山口社長の個人資産の処分などで返還していたが、ついに02年10月に返還に応じられなくなったことから、このいびつな契約の矛盾が一挙に爆発する。預託金償還についての代替案を提示したのに内房が言うことをきかない、と主張するKGCと、代替案は調達不能の多額の資金負担を伴うから無理だし、預託金はすべて日経の支持通りコース建設に充て、収入はすべてKGCが握り、預託金償還に備えて積み立てをしてほしいという要望も無視された、とする内房とが対立。KGCが内房の破産申立をしたり(後に取り下げ)、内房がKGCの責任を問う訴訟を起こしたりといった訴訟合戦が展開された挙句、ついに昨年10月には、KGCが内房の、12月には内房がKGCの更生法をそれぞれ申請するという前代未聞の事態に発展した。 いったい更生開始決定はKGCに下りるのか、それとも内房に下りるのか、大いに注目を集めていた中、今回両社に更生開始決定が下りたというわけだ。 もっとも、内房がKGCに対して更生法を申請した際、「内房、KGC両社一体での再生が必要」であることを強く主張、今回の東京地裁の決定はこの流れに沿うものと思われる。 今後の再建については、管財人側が「当分多忙でメディアの取材には応じられない」としているため、明らかではないが、会社更生法の規定からすると、遅くとも来年の今ごろには計画案が出てくることになる。 「1社で担うべき役割を無理やり2社に分けたような形になっているため、両社を合併した上で再建を図ることになると思う。このコースは預託金以外に債務はないので、スポンサーに出資させて出資額相当分を配当にまわし残りをカットするという方法や、株主会員制にして預託金を株式に振り替えるという方法も考えられる」(ゴルフ場問題に詳しい弁護士)と言う。 同GCは、日経グループのコースとして募集をし、預託金の払込口座もKGCだったため、会員からは「預託金は日経の子会社であるKGCが預かっていると思っていた。この問題が起きて、証書を見たら内房の名になっていて愕然とした」という声も聞かれ、当然スポンサー候補として、日経に寄せられる金額上の期待は大きい。 現在も日経はKGCの運転資金面での支援を行っており「スポンサーを積極的に引き受ける用意はあるし、スポンサーに選任された場合は、資金面、人材面で支援していく」(日経社長室)とするものの、金額面については自ずと判断が働く。 現在、ローンスター、ゴールドマンサックスの2社を筆頭に、国内ゴルフ場の激しい争奪戦が展開されている。日経以上に有利な条件を提示するスポンサーが現れたり、あるいは唯一の債権者である会員が、結束して株主会員制を望めば、日経をスポンサーとする再建以外のシナリオもあり得なくもない。 契約形態が前代未聞ゆえ、経営会社と預託金証券発行会社が互いに更生法を申請し合うというのも、そしてその両社に開始決定が下りるというのもすべてが前代未聞。成り行きが大いに注目される。