週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
「張連偉は欧州ツアーやアジアツアーで、彼の能力を証明した。私たちは出場選手の中に中国からの素晴らしい代表選手を加えることができたことにエキサイトしている」と語ったのは、フーティ・ジョンソン大会会長だが、アジアの選手で招待を受けるなら、もっと実力が上の選手がいるのではないか? といった声が上がっているのだ。 「張がマスターズに招待されたことに非常に驚いている。彼はとてもいいプレーヤーだが、今回の決定には、政治的な判断があるように思う。もちろん、張の出場を祝福しているが、自分としては、張より先に自分か(ジョティ・)ランダワが招待を受けると思っていた」と語ったのは、タイ出身のT・ジェイディだが、そのランダワ(インド)も、「張より先にジェイディが招待を受けるべきだ。アジア(ツアー)では、張を優先させてジェイディが見過ごされたことは、大きな驚きを持って受け止められていいる」と同様の意見を公言して憚らない。 マスターズの特別招待というのは、毎年1~2名ほどマスターズ委員会が選ぶもの。ワールドランクや、米ツアーの賞金ランクなど出場資格には様々なカテゴリーがあるが、このカテゴリーには入らず、しかも、優秀な選手が出場権を得られないのをカバーするために設けられたものだ。かつては、日本ツアーの賞金王が慣例として選ばれることが多かったが、こうした招待を受けなくても、日本人選手がワールドランクなどで出場できるようになったことから今年はアジアの選手に目が向けられたのだろう。 しかし、アジアの選手が招待されることは、我々日本人としても嬉しい話だが、先述の選手たちが訝るように、なぜ張なのか? という疑問は残らないでもない。 確かに昨年、アジアと欧州のジョイント・ツアーでもあるカルテックスマスターズで、中国人としては初めて優勝、話題を集めたが、なんといっても現時点(3月末)でのワールドランクは178位。これに対して、前出のジェイディは70位だし、ランダワは98位。 昨年、張が優勝したといっても、欧州ツアーでの成績は参戦6試合中、この優勝を含めて予選通過は2試合だけ(昨年から今年3月下旬までは、14試合中7試合で予選通過)。 一方、ジェイディは、今年のマレーシアオープン(欧州とアジアのジョイント・ツアーでもある)での優勝など、昨年から欧州ツアーに15試合に参戦して12試合で予選通過。ランダワも昨年、日本のサントリーオープンで優勝、日本ツアーの賞金ランク26位(張は37位)、欧州ツアーでも14試合中13試合で予選を通っており、実力では、この2人のほうが上と見るのが普通である。 その辺は、特別招待の人選にまつわり、毎度出てくる問題だが、これに加え、世界で最大の人口を抱え、経済成長著しい中国出身という肩書きが加味された可能性も十分にありそうだ。 今年のマスターズでは、女性メンバー問題での、デモやプロテストはない模様だが、米国に限っていえば、今年もテレビCMなしで中継が行われる予定。それを可能にしているのが、海外からの放映権料の収入だとも言われている。つまり、海外、とくに日本を含めたアジアへの期待が大きく、将来を考えれば、中国マーケットは見逃せないということなのかもしれない。 そういえば、マスターズの公式ウェブサイト(www.Masters.org)では、英語以外では初めて、今年から日本語サイトがスタートしているが、こうしたことも、マスターズがアジアに熱い視線を送っている証拠といえるのかもしれない。