週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
今から6年半前の平成9年12月、最大手日東興業の破綻で幕を開けた国内専業大手の経営破綻のうち、RCCが破綻手続きの申立当事者になったケースは今回で4例めだが、過去、RCCが各社に対してとった立場はまさに“三者三様”。スポーツ振興では経営者を排除する目的で、RCCが単独で会社更生法を申請したが、その1年後の日本ゴルフ振興では「当社の再生機能を使う条件を満たしている」として、共同で民事再生法を申請。 さらにその1年後にあたる今年2月の大洋緑化のケースでは、共同申立でなおかつ更生法を選んでいる。また、破綻ではないが、信和ゴルフに対しては債権放棄に応じている。 そして、RCCが申立当事者になった専業大手では4例めとなった今回の私市のケースでは、スポーツ振興同様、RCC単独申立の更生法を選んでいる。 RCCが常々主張している「対応についてはコース経営会社各社の事情ごとに、個別に最善と思われる方針でいく」というスタンスを、裏付けるような結果と言える。 「過去の過大な投資を原因とする巨額の負債の問題もさることながら、預託金償還問題や、売上減少問題などで、経営状況の悪化が深刻化する中、私市から出てきた再建案では内容が不十分だっただけでなく、我々債権者に対する情報開示も十分ではなかった。このままでは会員に対しても影響が及ぶと考えた」(RCC広報)ため、RCC単独での申立、しかも経営者を排除出来る更生法を選んだというわけだ。 私市グループのルーツは、創業オーナーの浅川吉男氏が昭和28年に設立した建設会社・協和建設。ゴルフ場の造成工事などを請け負ううちに、自社でのゴルフ場建設を思い立ち、自前で用地を手当して昭和43年10月に第一号のコースとなるきさいちCCをオープン、以後昭和56年11月までの13年間に合計8コースをオープンさせている。 しかし、バブル期に計画したコースは、会員権募集が思うに任せず、建設途中でオープンを断念するケースが相次ぎ、唯一平成5年にオープンにこぎ着けた、法人の接待用コース・松尾GC(千葉)も、5000万円の会員権が600名の募集目標を大幅に下回るなど、苦戦が続いた。 今回更生法申請の対象になった私市グループ5社の負債総額は759億円だが、このうち9コース・3万5000人の会員から預かった預託金債務は448億円。預託金の平均単価は350万円強だから、それから考えると、さほど多額だとは言えない。 問題は残る311億円の負債で、大半は金融債務だ。この金融債務は、当初13年間で建設したコース施設に担保を設定、それでバブル期に計画したコースの建設資金をまかなっていたのだが、それらがことごとく計画途上で頓挫したため、未だに各コースには巨額の担保が付いたまま。従って、債務返済のメドが立たない限り、いつコースが競売されるかわからない状態だったことになる。 私市のコースが集中する関西地区のゴルフ会員権業者からも「私市グループのゴルフ場は典型的な大衆コースだったが、この1年、経営危機の噂は絶えなかった。会員が預託金の償還をコースに求めると、コース側からは、『とにかく会員権の転売先を探してくれ、転売先には名変料をタダにするから』と言われた、という話もよく聞いた。実質的な会員権相場は数万円レベルだったから、いつ破綻してもおかしくなかった」との声が聞かれる。 ともあれ、これで再建に向けて動き出すことになる。すでに「スポンサーになりたいというオファーはいくつか寄せられていると聞いている」(RCC広報)と言う。 国内ゴルフ場業界は、ローンスター対ゴールドマンサックスの買収合戦は、当初の量の競争から質の競争に入った感もあるが、果たして私市のコースにはどんなスポンサーがつくのか、注目される。