週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
同GCの経営会社だった(株)ダイワヴィンテージが民事再生法を申請したのは、今から3年半ほど前、民事再生法施行から半年後の平成12年10月。東証1部上場のスポーツ用品メーカー・ダイワ精工の100パーセント子会社の民事再生申立は、それまで上場会社としての世間体や道義的責任から“大企業系列のコースは親会社が潰れないかぎり安泰”という常識を覆した。 申請理由は「会員1048名の預託金125億円の償還期限到来を半年後に控え、返還請求の殺到による混乱を未然に防ぎ、会員のプレー権を確保するため」というものだった。 親会社のダイワ精工も、東証1部上場とはいえ、子会社の預託金債務をマルマルかぶれば自社の財務基盤を危うくしてしまう。親会社から子会社への167億円の貸付金を放棄するなど、自らも血を流した上での申立となったわけだ。 申立から約半年後に認可を受けた計画案の骨子は(1)退会希望会員は預託金の80パーセントをカット、残り20パーセントを平成22年までの9回分割で返還、(2)継続会員は預託金カットなしで、平成22年以降、退会希望者のうち抽選で毎年総額3740万円を限度に返還、(3)新たにダイワ精工の100パーセント出資で設立した(株)ビンテージが、営業と継続希望会員の預託金債務、それに退会希望会員への返還義務を引継ぎ、従来の子会社は清算というものだった。 計画認可から3年経ったこの3月30日、ダイワ精工が保有するビンテージ社の株式1500株のうち98パーセントにあたる1470株を、有限責任中間法人倶楽部ヴィンテージ、(株)ビンテージ役職員持株会などに1株1円で譲渡する計画を発表した。 計画では600株を保有することになる中間法人は、すでに設立されており、今後詳細を詰めた上で会員に参加を募るが、「参加にあたって新たな負担はない」(ダイワ精工・広報)という。持ち株会にも570株が譲渡されるので、会員と従業員でビンテージ社の発行済み株式総数の78パーセントを握ることになる。現在、クラブハウスはダイワ精工が保有、ビンテージ社に賃貸しているが、株式譲渡後も保有を続けるので、ビンテージ社にとってダイワ精工は親会社ではなくなっても、大家と店子としての関係は続く。ちなみに1株1円という金額は、ゴルフ場施設を保有せず、継続会員の預託金債務を引き受けているビンテージ社が債務超過であることから弾き出された金額だ。 今回の措置について、ダイワ精工では「来場者の増加やコスト低減などにより経営の黒字化に目処が付いたので、会員による自主運営のゴルフ場に移行し、ダイワ精工本体は本業であるスポーツ・レジャー用品の製造販売に集中する」(同社広報)と説明している。 たしかにこの3年でビンテージ社の赤字幅は年々縮小しており、「独立後は賃金体系の見直しで経費はさらに減る」(同)し、直近の入場者数も年間3万6000人と、黒字化にメドが立ったのは事実だろう。 ただ、会計の専門家からは「2年後から義務づけられる固定資産の減損会計(編集部注)対策の意味もあるのでは」(監査法人OBの公認会計士)との声もある。 ダイワ精工がビンテージ社の株を手放せば、連結決算対象から外れ、ダイワ精工としては減損で巨額の赤字が発生するリスクから解放されることになる。 この点について、ダイワ精工では「企業経営としてリスク回避は必要」とし、減損対策の意味もあることを認めているが、会員による自主運営が実現し、ダイワ精工の経営リスクも減るとなれば一石二鳥だろう。 上場会社に義務付けられる固定資産の減損会計導入まであと2年。アノ手コノ手で、ゴルフ場を切り離しにかかる動きが加速するかもしれない。それによって会員が割を食う格好にならなければよいのだが……。 ●固定資産の減損会計とは? 固定資産の時価が、帳簿上の価格の半分以下になったら帳簿上の価格も時価に合わせて引き下げなくてはならず、引き下げた分は特別損失となり、巨額の赤字が発生しかねない。平成18年3月期決算から上場会社に義務づけられる