週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
R&Aが違反クラブと判断したのは、カタナゴルフのドライバー「スウォード830」と「同855」。問題になったのは両モデルが採用し、“世界初高反発ソール”と謳っているスリットソール構造だ。ソールにフェース面と並行に1本の溝が設けられ、これでソールにも弾性変形力が生まれるとされる。 同社の説明によれば、従来、ソールの構造は耐久性と低重心を保持するため肉厚にならざるを得ず、弾性変形力を持たせることができなかった。それをこの構造にすることで、クラウン部のたわみと合わせて、ヘッド全体が弾性変形、つまり一度つぶれてから跳ね返す力が生まれ、飛距離がアップするという。 同社の今季イチオシのクラブで、目下、全国で試打会が行われているところだ。 「確かに飛ぶと評判です。スウィートエリアの広さでも受けが良く、とくにフェースの下のほうに当たっても、弾道も飛距離も変わらない点に驚かれているようです」(広報担当)と、いい手ごたえを感じている。ところが、その矢先に降って湧いたのが今回の違反判断だった。 R&Aの通知によれば、同クラブは付属規則II5aの規定、すなわち、(1)インパクト時点でスプリング効果を持ったり、(2)標準的なスチールフェースと比べてスピン量に著しい増減をもたらしたり、(3)ボールの動きに不当な影響を与えてはならない(条文要約)とされる規則に抵触し、「有効打点面積を増強するスプリング作用がある」(通知書)と判断されたという。 これに対し、カタナゴルフ側では、「違反とされる明確な基準が示されていないので、その開示を求め、こちらの主張を沿えて、異議申立(通知後、42日間は認めるとされていた)の手続きを執りました。現在、その返答を待っているところで、まだR&Aの最終判断が出たわけではありません」(前出・広報担当) そして、同社の主張の柱となっているのが「(今流行りの)クラウン部のたわみの利用はルール適合で、どうしてソールだと不適合なのか」という点であることも明かしてくれた。 素人目には、同社の主張に理があるように思えるのだが、実は関係者の間でも「今回は、R&Aから回答が出されるのは、かなり先になるかもしれませんよ」という見方もある。 ところで、このように発売後に、R&Aもしくは日本ゴルフ協会により「不適合」の憂き目にあったクラブといえば、83年のヨネックスのカーボンアイアン(今年、新構造のカーボンアイアンを発売)が思い出されるが、他にも、「ユーティリティクラブでは確固たるポジションを得ていたリョービの『ビガロスメディア』のQ201が2000年9月に、JGAにより不適合とされたことがありましたね」と語るのは、用品業界に詳しい片山哲郎氏だ。同クラブのうち、ヘッドのソールから側面にかけて穴が貫通しているモデルが、付属規則II4a「単純な形状」規定に抵触するとされ、販売中止だけではなく、穴をふさぐ補修もせざるを得なくなったのだ。 「これが昇り調子にあった同社のクラブ部門の勢いに水を差す結果となり、その後の撤退の一因になったと思います」と片山氏は振り返ったうえで、このようなトラブルが忘れた頃に持ち上がる背景には、「どのメーカーもR&Aに事前のサンプルを送って審査してもらっているので、本来は防げるトラブルなんでしょうが、最近はクラブの発売サイクルが短いため、時間的に余裕をもってサンプルを提出できないのが原因でしょう」と語る。つまりは、今後もこうした騒動は起こり得るようだ。 R&Aの裁定がどうなるかはまだ先の話だが、COR騒動のとき同様、この違反通告で、ある意味、「飛ぶクラブ」とのお墨付きを得たことになった!?