週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
先の日本プロで片山晋呉が使用していたパターに目を見張った読者もいるだろう。半円状の大きなヘッドで、フェースの長さは6.7インチ(約17センチ)にも及ぶ。ピンの「Doc17(ドックセブンティーン)」という新製品で、日本でも先週17日に発売された。 「削り出しなので一度に大量生産できないため、今回はアメリカより先に日本で売り出されることになりました。重心をフェースからもっとも遠い部分に置き、市販パターの中で最大の慣性モーメントになっています」(ピンジャパン・安本素之社長)とし、実際に店頭で試打した人には、スウィートエリアの広さが好評と語る。 それにしても、ピンは今春、「G2i クレイジー」という2ボールタイプの大型の異形ヘッドパターを発売したばかり。異形の2連発で、この先はいったいどんなものが……。 そう考えたのは、我々ユーザーだけではなかったようだ。米国ゴルフ協会(USGA)では、この3月にメーカー等に対し、これまで無制限だったパターヘッドの寸法に関する規制案を提出。現在は、発効までの猶予期間として、反論等、意見の収集に当たっていたのだ。 もともとクラブヘッドの形状には、付属規則II4aで「単純な形状」という規制が示されている。ところが、同条文には「ただし、パターについては多少の例外を認める」という一文がある。そのため現実には「あまりにも多くの形状のパターが出ているため、パターの“単純な形状”の定義をしっかりと固めないと、ルール違反かどうかの判断が難しくなってきた」と、背景の事情を語るのは、この規制をUSGAとともに検討してきたロイヤル&エンシェント(R&A)のクレア・ベイツ女史(用具審査担当アシスタントディレクター)だ。 同女史によれば、両協会は半年ほど前から合同で検討していたそうで「単純な形状」を定義するには、数値で規制するしかないとの判断から今回の改訂の提案に至ったという。 その数値とは、全幅(フェース部分とは限らない)が7インチ(約17.78センチ)以下。フェース幅は奥行長の3分の2以上で、かつ全幅の2分の1以上。そして、従来からフェース幅が奥行長より長くなければならなかった(付属規則II4b)のに加え、全幅は奥行長より長くなければならないという規定も加えた。また、全高(フェースの高さとは限らない)も、今回2.5インチ(約6.35センチ)以下と新しく制限が加えられた。 全幅では、先のDoc17があと0.3インチとギリギリのラインにまで来ている。ピンからは前もって、USGAの用具審査担当にサンプルが送付されていたはずで、同パターが数値設定に影響を与えたのだろうか? 「特定のひとつのパター名を挙げることはできないが、Doc17やフューチュラ、2ボールパターなど、ここ数年で出たパターをすべて考慮し、合理的な大きさとして規定した。すでに市場に出ているパターを不適合としてしまうルールは作るべきではないという判断はあった」(ベイツ女史) かつて、反発係数規定の際にも、当時市場に出回っているクラブの最高値をもとに、やや余裕を持たせて設定したという経緯があった。それと同じ決め方だったのだろう。 今回の規制に対して、前出の安本社長は、「“単純な形状”の規則を守ると同時に、これ以上スウィートエリアが広く、ミスパットの確率が減るパターの出現に歯止めをかけたいという意向もあるのではないでしょうか」と推測している。 同規制は、現在はあくまで提案段階で、メーカー側から合理的な反論がない限り、6~7月にも発効したいとのこと。これにて、異形パターの登場は打ち止めとなるのだろうか。