週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
ダンロップのSRIスポーツから6月19日に発売される「ゼクシオプライム17(セブンティーン)」は、その名の通り、ロフトが17度のシニア向けドライバーで、遅いヘッドスピードでも高い打ち出し角が得られ、飛距離が出るというのがウリだ。通常、17度もロフトがあるとバックスピン量が増えすぎて吹き上がり、飛距離をロスするのだが、このドライバーはダンロップ初のカーボン複合ヘッドで徹底的な低重心化を図り、無駄なスピンを抑えているという。 この一見“奇抜な”ドライバーを開発した経緯について、SRIスポーツでは「シニア層のゴルフ離れを食い止めようというのが第一義。飛距離の落ち込みが原因でゴルフをやめてしまうシニアゴルファーは結構います。リサーチの結果、彼らはヘッドスピードがだいたい35m/sくらい。だったら、そのヘッドスピードで飛ぶクラブを作れば、パワーが落ちてきても楽しくゴルフができるだろうと考えたのです」(広報担当) ところで、このドライバーも当然、高反発だが、ロフトが17度であるというところに特別な意味がある。というのは、現在ルールの総本山、R&A(ロイヤル&エイシェント)が定める「ドライビングクラブ」(ドライバー)の定義は「ロフト15度以下」とあり、反発係数が規制されているのもこの「ドライビングクラブ」に限ったことである。その意味で言うと、今回の「ゼクシオプライム17」は「ドライビングクラブ」の定義から外れていることになり、高反発仕様のままでも何ら問題がないことになる。国内の一般アマチュアにも反発規制のルールが適用される08年以降も使用可能ということになるのだ。 このドライバーについても、カタログには「R&AとUSGA(米国ゴルフ協会)が定める反発係数基準値を超えている」と謳っており、穿った見方をすれば、今回も実はそこが狙いなのではと思ってしまうのだが。その点を、SRIスポーツに直接尋ねると「決して高反発が狙いなのではなく、打ち出し角を上げてキャリーを伸ばすことが設計の主眼」ということだった。しかし、他メーカーでも極端にロフトを増やしたモデルを開発中との噂もあり、水面下の動きはかなり激しい。 現状では、このスペックでヘッドスピードが速い人が打つと、吹き上がり、飛距離をロスしてしまうが、今後もっと低重心化が可能になるなどして、スピンのかかり過ぎが抑えられるなら、ドライバーの新しい流れが生まれそうだが、その可能性はあるのだろうか? クラブ設計家の松尾好員氏は「その可能性は少ない」と見ており、「同じ高反発ならロフトが立っている(少ない)ほうが初速が上がります。仮にルールの網目を潜り抜けて高反発フェースにしたとしても、ロフトが多いと性能が100パーセント発揮されません」としている。 そもそも、ルール上、17度だからといって、高反発規制を逃れられるかということにも疑問符がつく。昨年11月にR&Aのルールセクレタリー、D・リックマン氏が各メーカー宛て出した覚書の中には、「スプリング効果に関してはデザインの革新などをつねに監視し、必要とあれば15度以下に限らずすべてのクラブをチェックする」という一文がある。つまり、多めのロフトのクラブが増えれば、やはりそれも「ドライビングクラブ」とみなされ、反発規制の対象となる可能性があるということだ。 いやはや、メーカーの創意工夫と、ルールの制約のいたちごっこ。果たして、われわれ一般ゴルファーはそのことによって、何か恩恵があるのだろうか?