週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
ブラインドゴルフは、その名の通り、盲人や視力障害を持った人々が、家族や友人などにアシスタントをしてもらって、距離や方向を教えてもらいながら、ゴルフをするもの。1938年に米ミネソタ州で、初の盲人によるゴルフ競技が開催され、日本でも、94年の全国大会以来、少しづつ市民権を持ち始めているのだが、このブラインドゴルフが、ちょっとしたスキャンダルに揺れている。 イギリスのブラインドゴルフ協会。狭い社会ながらも、ブラインドゴルフにかかわる世界中を驚かす「事件」が起きた。盲人ゴルフの世界王者デビッド・モリス氏(59)に「本当は目が見えるのではないか?」という嫌疑がかかっているのだ。 モリス氏は、02年にカナダで開催された世界選手権の優勝者で、今年の4月にオーストラリアで開催された世界大会でも、36Hで219というスコアで優勝している。つまり、この世界では有名なトッププレーヤーなのだが、そんな人物が、嘘の申告で大会に出場していた可能性があるとして、大きな問題になっているのだ。 ブラインドゴルフの世界大会は、視力障害の程度によって、部門別の競技を行っているのだが、モリス氏は完全な盲目プレーヤーとして、世界王者になっている。ところが、イギリスのデーリー・メイル紙が伝えたところでは、イギリス南西部のニュークエイという所にある自宅周辺で、モリス氏が杖も使わずに歩いているのが目撃されたとか。自宅の周りとはいえ、犬をよけたり、道路の溝を越えたりするシーンがビデオに撮られ、さらには「なにしろビックリしたよ。彼とは10メートル近く離れていたんだけどね。私を見つけて、彼は手を振ろうとしたんだ。たぶん自分のやっていることに気づいて、すぐに腕を下げたけどね」という市役所の職員、ゲーリー・レッドマンさんのコメントまで紹介しているのだから、どうしようもない証拠をつき付けられてしまったようだ。 イギリスのブラインドゴルフ協会では、こうした報道を受け、正式な調査を開始したそうだが、同協会をN・ファルドやL・ウエストウッドもサポートしていることもあって、ちょっとしたスキャンダルに発展しそうな雰囲気だ。 とはいえ、ブラインドゴルフ協会の本来の目的は、基本的には障害を持った人々にもゴルフというスポーツを楽しんでもらおうというもので、その競技会は、たしかにプレーヤーたちの技術を競うという面もあるが、同じ趣味を持つ人々との親睦会的な面も強い。つまり、オリンピック以上に、勝ち負けにはこだわらず、参加することに意義がある試合といえる。結局、この疑惑を受けての協会の調査では資格剥奪とはならなかったようだが、今後は従来の全盲の部門での出場は難しそうだ。かといってブラインドゴルフそのものが傷つくわけではない。むしろ、このスキャンダルでブラインドゴルフが注目され、同協会にとっては、プラスになったという見方もあるくらいだ。 ブラインドゴルフは、先述のように、視力障害者がひとりでプレーできるものでなく、ゴルフを知るアシスタントとの二人三脚でされるもの。それだけに、つねにボランティアが必要とされている。逆に、このスキャンダルをバネにしてブラインドゴルフが一般に知られ、さらに普及していくことを望みたい。