週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
その人物とは、予選を75(3位タイ)の好スコアで勝ち上がり、5月25・26日の第24回中部日本パブリックアマチュアゴルフ選手権(名古屋港GC富浜C)に出場した山下朋之さん(44歳)だ。 山下さんはもともとサウスポー。箸やペンを持つのは右手だが、中・高生時代のバレーボール、そして大学時代の野球ともスポーツはレフティとして活動した。20年ほど前、友人に誘われて始めたゴルフも左打ち。年数回というペースながらも順調にHC14までいったという。その山下さんに転機が訪れたのが一昨年。 「ゴルフに真剣に取り組むようになり、練習にも週3~4回通い始めました。ところが、腰を曲げた姿勢でアプローチショットを50~60球も打ち続けていると腰が疲れてくる。その疲れを解消するために、反対の動きをする右でも打つようにしたんです」(山下さん) ところが、腰痛矯正の意味で始めたはずの右打ちが当たる当たる。SW1本から始まった右打ちが、いつしか右だけでラウンドできるレベルにまで上達。ショットの精度が左と遜色なくなった頃には、シングル入り(HC9)を果たしていた。 山下さんのクラブセッティングを紹介すると、ドライバー、1・4・6・8I、PW・SWが左打ち用。3W、3・5・7・9I、PSは右用と見事にジグザグに。パターは基本的に右のピンを使用していたが、重いグリーンに対応すべく最近はヘッド重量のある左用を使用中だ。 どちらかに統一したほうがシンプルにプレーできそうなものだが、実はこのジグザグのセッティングにこそスイッチヒッター最大のメリットがあった。 「私は、つま先上がりのライだとフックしやすいんです。20~30センチもつま先が高いとラインは出しにくいし、ボールもグリーンに止まらない。一方、つま先下がりならスライスもフックも打てるので、つねにつま先下がりの状態にしたいのです」 距離的には7I(右)だとしても、つま先上がりのときは、あえて大きめの6Iを選ぶ。こうすることで左打ちにはつま先下がりのライに変身するのだ。その他、「ボールがカート道に止まってドロップする際に、ライのよいサイドにニヤレストポイントを設定できる」「木などがスタイミーになった場合、曲げ幅が大きく距離も出るフックボールで攻められる」など両打ちのメリットは多い。 左右とも持ち球はフック。本人曰く「インパクト時に押す力は利き腕の左手のほうが強い分、距離は左が出ます。でも、ダウンで左でリードしやすく、インパクトでも左手が伸びるのでフォームは右のほうがいいと思います」(山下さん)。 飛距離が若干出ない右打ち用のアイアンはロフトを立てることで、番手間の距離をきっちり10ヤードに調整している。ちなみに、ドライバーの飛距離は250ヤードだそうだ。 練習場では左右両用の打席を使い、それぞれ200~250球ずつ計500球近くのボールを打つという。隣の打席のゴルファーがいきなり左右で打ち始めたら驚くこと間違いないが、実際には「何も言われないことも多いですよ」(山下さん)。 左右ともあまりにスウィングがスムーズなため、周囲も違和感を受けないのだそうだ。 競技歴はまだ2年足らずにして、大会出場2回目にして早くも中日パブリックアマ予選を突破。「これからも左右でいきます」とスイッチヒッター続行宣言をする山下さんだが、そのユニークなプレースタイルのみならず、今後の活躍ぶりにも大いに注目したい。