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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。

週刊ゴルフダイジェスト 6/29号
2004年更新
隠しカメラ使った貴重品ロッカー盗難事件
ゴルフ場側にも一部責任ありとする判決
 ここ1~2年、ゴルフ場の貴重品ロッカーの暗証番号を隠しカメラで盗撮する盗難事件が横行し、問題になっているが、この手口でキャッシュカードから現金を引き出された事件で、被害の一部はゴルフ場にも責任あるとして、ゴルフ場側に賠償を命ずる判決が、先ごろ東京地裁で下された。

 事件は昨年4月19日に静岡県内のゴルフ場で起きたもの。被害者の原告は、当日朝、貴重品ロッカーの中に現金(約3万円)と銀行のキャッシュカードが入ったサイフを入れ、暗証番号を入力し、施錠をした。

 ところが、そこには犯人側があらかじめ隠しカメラを設置しており、暗証番号は犯人側に知られることとなった。そして、すぐに同ロッカーは解錠され、サイフの中から現金3万円とキャッシュカードが窃取され、さっそくゴルフ場近くの金融機関内のキャッシュディスペンサーから同カードで現金156万円が引き出されてしまった。

 この事件に対して、被害者がゴルフ場にも責任があるとして賠償を求める裁判を東京地裁に提訴した。その判決が5月24日に下されたのだが、ゴルフ場の貴重品ロッカーでの盗難事件では初めて、ゴルフ場と利用者の間に、利用者が預け入れた物の保管を引き受ける預託契約が成立したと認定、被告のゴルフ場に賠償責任があるとの判断を示した。

 その理由として、まず同ロッカーは「貴重品ロッカー」という名称が表示され、顧客に対して貴重品はフロントから目が届く同ロッカーに入れるように指示。あわせてロッカー室のロッカーについては盗難の責任は負わない旨の表示があったことなどから、ゴルフ場には少なくとも貴重品ロッカーからの盗難には注意を負う義務があった。さらに、ゴルフ場側は不審者が同ロッカーに隠しカメラを設置したことを見逃し、かつ不審者が同ロッカーを開けカード類などを盗み出したことに気が付かなかったため、預け入れられた内容を把握していなくても、寄託契約に基づく管理責任があるとしたのだ。

 ただし、賠償額に関しては、原告にも同ロッカーにカードと同じ暗証番号を使ったという過失が認められるとされた。そして、その過失割合を4割と認定。その結果、ゴルフ場側には、引き出された被害額156万円のうちの6割=93万6000円と、サイフから盗まれた現金3万円の計96万6000円を原告に支払うよう命じた。

 この判決について、ゴルフ場での法律問題に詳しい熊谷信太郎弁護士は、「こうした貴重品ロッカーにおける盗難でゴルフ場側に賠償責任を認めたのは初めてですが、これは特別なケース」として、今回は(先に記した)いくつかの要件があり、さらに犯人が捕まって盗難の手口が証言されたことなどによる、特別な事例と語る。

 そして、基本的な解釈として、「貴重品ロッカー」といっても、それは単により安全な一時的な保管場所を提供しているに過ぎない。また、ゴルフ場側は誰がどのボックスに入れたか、あるいはきちんと施錠したかを、いちいち確認するわけではなく、利用者とゴルフ場の間に寄託契約は成立していないというのが、従来の判例だと説明する。

「ですから、今回の判決に関係なく、貴重品ロッカーを利用する場合は、従来通り自己責任が原則です。利用に際しては、十分に注意すべきですね」と熊谷弁護士からのアドバイスである。

 そこで、まずは暗証番号だ。「○○の一つ覚え」だけは卒業し、せめてキャッシュカードとロッカーだけは番号を使い分けしたいものだ。

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