週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
先々週、所属先であるサントリーの主催競技の最終日。それは、彼女が持つスター性、ヒロイン性(=期待されたところで結果を出すヒーロー性)を見せつけた一日だった。当日、会場にはニューヒロインを見たさに、昨年の最終日のほぼ倍にあたる8145人ものギャラリーが押し寄せた。 もちろん、大会側も事前にギャラリーの増加は予測していた。だが、実際はそれをはるかに上回っていたようで、ギャラリー送迎バスはピストン輸送でも一時滞りがち。 「会場のスペースやコース内の観戦場所の広さからして、6~7000人が限界だったと思います」(大会関係者)ということで、会場はパンク寸前。最終18番では藍ちゃんの最終組のプレー後は、ギャラリーをフェアウェイに入れざるを得ない状況になった。 「正直、あのギャラリー数には驚きました。予想以上です。してやったり? いえいえ、宮里選手はじめ、この大会で招待してきた各国のアマチュア選手や、そこからプロになった選手が、この大会出場をきっかけに成長し、こうしてファンの皆様を喜ばせてくれていることがうれしいですね」(大会事務局長・城戸秀雄氏) ちなみに、同社では彼女をCMに登用する予定は、今のところないそうだが、サントリーレディスの溢れんばかりの賑わいを見て、いま不安感を募らせているのが今週のプロミスレディスの運営関係者だ。 「藍ちゃんがプロ入りしてからは、どの大会もギャラリー増を見込んで計画を立てていますが、こればかりは実際にやってみないとわからないですから……」(電通トーナメント事務局) ギャラリーの増加はうれしいことだが、半面、予想を大きく上回る来場には、マイナスの反響が出る。あまりの混雑にお目当てのプレーが見えない。トイレの数が少なくて不自由する、といった不満から、せっかくの入場者を次回は制限すことが考えられるからだ。 「今のいいムードをツアー関係者全体で、注意して持続させていきたいと考えています」(日本女子プロゴルフ協会・高須皓友トーナメント部門エグゼクティブディレクター) 波紋はトーナメントだけではない。用具類のトータル契約を結ぶブリヂストンスポーツは、彼女が使用するボール、ドライバーの売上げが絶好調。これまで、女子プロが使用して男性ゴルファーにアピールした例は数少ないが、男性ファンの中には、わざわざ彼女と同じスペックを特注で注文する人も少なくないという。 「これまでもジャンボさん、丸山(茂樹)さんなどが当社の広告塔になり、効果を上げた例がありますが、藍ちゃんのように契約後すぐに、これだけ大きな反響があったのは初めてでしょうね」(広報部) 同社によれば、ファンの中心は30代以上の男性。だが、今後は女性やジュニアへの波及も予想されるという。そこからゴルフ界全体の活性化につながるよう、大切にフォローアップしていきたいと語る。 実は、その波及効果がすでに現れていた。 「最近、トーナメントの主催を検討しているという企業からの問い合わせが何件かありました」(前出・高須氏) これまで同ツアーの再活性化には散々頭を悩ませてきたものだが……。 そこで同氏もホッとしたというのが、当初計画されていた藍ちゃんの来季米女子ツアー挑戦が1年先送りされたことだ。実は米ツアー予選会の日程が、ひとつは昨年優勝したミヤギTV杯と重なり、もうひとつも日本女子オープンの翌週という時間的に厳しいことに加え、父親・優氏が「藍が注目され活気の出てきた日本女子ツアーの良い流れを切ってはいけない。まだ18歳(当時)、挑戦を1年遅らせることは大きな問題ではない」と判断したからだ。 今後、しばらくは藍ちゃんの一挙手一投足に業界関係者一同、一喜一憂する日々が続きそうだ。