週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
平成9年12月に開通したアクアラインだが、当初見込まれた1日4万台を大きく下回る交通量に、片道4000円(普通乗用車)という通行料金の値下げを余儀なくされ、現行は3000円。ETC利用者はさらに安い2320円だが、現在も1日の交通量は約1万4千台と開通前の予測に達していない。アクアラインを使えば川崎~木更津間の距離は約30キロ、時間も約30分に短縮されるが、高い料金を嫌い、高速湾岸線や館山自動車道などを利用した100キロほどの迂回ルートを選ぶドライバーが多いのが現実だ。 そこで、木更津市民らを中心に発足したのが「アクアライン800円実現化100万人署名活動推進協議会」(800円協議会)。 「燃料費節約や排気ガスの減少、渋滞緩和などによる経済効果は1日1億円に及び、値下げで生じる通行料金収入の落ち込み分を約18倍も上回る」との民間分析機関の試算を基に、大幅値下げの実現を目指すNPOだ。 千葉県南部のゴルフ場にとっても、アクアラインが安価で利用できるようになれば、安くプレーできるゴルフ場が少ない、神奈川や東京西部に住むゴルファーの来場が見込める。そこで、800円協議会の運動に千葉県ゴルフ場支配人会が賛同。南部・内房地区及び市原地区の約60コースを中心に、昨年11月からこの3月まで署名活動を行ってきた。 同協議会は、去る5月27日、44万人分の署名を持って石原伸晃国交相や倉田寛之参議院議長らに値下げを陳情したのだが、県内のゴルフ関連全体の事務処理を司る千葉県ゴルフ団体総合事務所の加藤重正専務理事によると「3分の1から4割はゴルフ場で署名されたもの」という。 支配人会を挙げて値下げ実現に取り組むのも当然で、アクアライン開通を機に神奈川方面からの来場者は増加している。 「私が昨年までいた千葉夷隅GC(千葉県夷隅郡)では、全体の来場者数に占める神奈川県からの割合は2年前が7パーセント。それが一昨年11パーセント、昨年は17パーセントと毎年ほぼ5パーセントのペースで伸びています」(加藤専務理事) 加藤氏によると、「迂回ルートに要する高速料金や余計にかかるガソリン代を考えると、アクアラインで3000円払ってもその差は片道数百円しかないそうです」。 実際、朝は湾岸自動車道などでコースに来た神奈川のゴルファーも、帰りは時間効率を優先してアクアラインを使うパターンが増えてきたという。 かずさCCと鶴舞CC(ともに千葉県市原市)は、横浜駅と両コースを結ぶアクアライン経由のクラブバスを4年前の4月から共同運行している。予約制で1名から毎日運行し、料金は片道1575円(税込)。 「神奈川方面の新規顧客を掘り起こすために始めました。利用者は年を経るごとに漸増し、最近では新規入会メンバーの半数が神奈川在住者です。所要時間は1時間ちょっとなので電車を乗り継ぐより早く、マイカーより経済的に得。入会理由にクラブバスの存在を挙げる方もいらっしゃいます」(かずさCC・日置敬支配人) バス運行にかかる経費だけを見れば持ち出しだが、来場者アップで総合的には成功。恒久的に運行を続けていくという。 今年で7年目を迎えた、神奈川新聞に折り込み広告30万部を入れるPR作戦も徐々に浸透。入場者減に悩む都道府県が多い中、千葉県の年間入場者数はここ数年700万人前後で推移している。 支配人会並びに千葉県ゴルフ協会では、値下げ実現に向けて今後も800円協議会への協力を続けていく意向だ。アクアラインの値下げが現実のものとなれば、千葉県のゴルフ場にとって、東京湾を隔てた神奈川県のゴルファーはますます上得意客となる。 一方、プレーヤー流出が少しづつ進んでいる神奈川県は、ゴルファー人口に対し、とくに安い料金のゴルフ場の数が不足している地区でもある。そのため、まだ今は余裕があるのかもしれないが、アクアラインがさらに値下げされれば、そうも言ってられない。そうなれば、低料金化が進み、神奈川サイドのゴルファーも恩恵を受けることになる?