週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
今やツアーの主役となった宮里を筆頭に、前半でプロ初Vを飾った北田瑠衣、茂木宏美、そして横峯さくらや諸見里しのぶなどアマチュアの活躍もあいまって、30歳代以上の選手たちの存在が薄くなりかけていた今季。宮里に連戦の疲れの色がさした第11戦で、最終日ともに60台スコアの好プレーを展開、プレーオフ突入という白熱したゲームを見せたのが藤井、木村だった。 一昨年10月のSANKYOレディースでは、やはり不動裕理ら主役級選手の多くを欠いた大会を“鉄女バトル”で盛り上げた2人。その大会では木村が逃げ切り優勝を果たしたが、今回は1時間以上に及ぶ6ホールの一騎打ちの末、藤井がリベンジを果たした格好になった。……と、こんな因縁めいた関係を思うだけでも興味深いが、両者それぞれの“濃いめ”のキャラクターが魅力的だ。 藤井は元来サービス精神旺盛の“ビッグマウス”系。一昨年は開幕前から「賞金1億、3勝、賞金女王」の目標をぶち上げ、賞金ランク2位に。昨年は「目標は思い切って大きめに」と「2億、10勝、ツアー記録達成!」とまで吹きまくり、ツアーに話題を提供した。 今季は前半、古傷の左膝を痛めたが、リハビリ休養明けのサントリーレディス時には、左の二の腕に『MP-001』と、使用ドライバーの銘柄を黒色でボディーペインティング。 「私、いつもノースリーブのウェアで、みんなのように袖のプリントがないから」と、大いにギャラリーの目を引き「いきなり復活V狙い? もちろん」と怪気炎をあげたものだ。 2年前から悩まされる首の不調で、前週は「(首も一緒に回すため)バックスウィングでボールが視界から消えちゃう。まともにボールが当たらない」と予選落ちした直後の、劇的な今季初勝利だった。 一方の木村は今春、長女を私立中学に進学させ、その下に小学生の長男と、2人の子供を女手一つで育てるシングルマザー。ペットショップを経営、毎年限りなくツアー皆勤を続ける頑強さ、01、02年と連続でパーオン率ツアー第1位に輝いたショットメーカーぶりを見ると、激しい攻撃型プレーヤーのような印象もあるが「雨の女王」の異名をとるように、悪天候下の我慢ゴルフで手にした勝利は多い。 一昨年5月のヴァーナルレディースでは、久保樹乃とプレーオフ7ホール(LPGAツアー制度施行後最長)を闘い、惜敗。今回と合わせ、たった2度で13ホールをプレーした挙句、どちらも勝てなかった不運にも「今回は(大会主催の)プロミスカラーの黄色いウェアで来たのになぁ」と、笑い飛ばす器量のある豪快ママだ。 木村が「4ホール目のバーディーパットが入らなかった瞬間『今日はかすみちゃんデーだ』と思った」と言えば、藤井も「敏ちゃんは本当にゴルフが上手いので、私は相手のミスを期待しちゃいけないと思ってた。普通だったら、6ホール中2回は負けてましたよ。ついてました、今日は」と本音トーク。こんな味のある闘い、若手には真似できないかも。