週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
今回、無償で回収修理する商品は、同社が昨年3月に発売した「インテージ」のドライバー。昨年話題を集めた、いわゆる複合素材ドライバーで、ヘッド上部であるクラウンが、通常の複合ドライバーがカーボンであるのに対し、マグネシウムという特殊な金属で作られ、これまでに約4万5000本が出荷されている。 リコールの原因は、そのマグネシウム部分とチタンボディの接着不良。ショットを繰り返すうちに、接着部分が剥がれ落ちる事例(苦情)が次々と報告されたのである。同社によれば、昨年6月の1件から始まり、7月10件、8月11件、9月28件、10月83件と月を追って増え、11月に105件を記録した後は、今年4月まで毎月120~140件もの苦情が届けられた。 「当初は製造過程で発生し、検品でもチェックできずに市場に出てしまった不良品、もしくは、リシャフトしてあるクラブも多かったので、リシャフトの際に、加えた熱が接着を劣化させたという、個別の問題と判断し、その都度無償でヘッドを交換していました」(広報室・西田維作氏) つまり、特殊な事例と考えていたのだ。しかし、苦情が増え続ける事態に、製造工程に問題があった可能性を確認せざるを得なくなった。 そこで、9月から順次、工程のチェックを行うと、一部に接着剤の塗りむらが発生することが認められた。 「製造ラインに乗せる前に十分なテストをやったつもりですが、複合素材の接着はまったく新しい作業工程ですから……」と西田氏は説明する。 そのため、11月からは在庫を総点検。さらに今年初めからはすでに店頭に並んでいた商品を回収、一個一個ヘッドに空気を吹き込んで接着面の劣化を調べるエアテストを実施。劣化があったクラブは、ヘッドを交換して、各販売店に戻し終えていた。 それと同時に、店頭経由で、すでに使用しているユーザーに対し、同様のテストに応じてくれるよう呼びかけていた。 ところが、4月には一旦減った苦情数も、5月150件、6月170件と連続して過去最多を記録するに至り(7月10日まで合計1274件の苦情)、個別に苦情が出るのを待っていたのでは完全回収は無理と判断。急きょ、リコールを発表することにした。 なお、同社によれば、苦情はいずれもクラウンの一部がはがれる程度で、パーツ全体が外れたことはない。もちろん、それによるケガなどの事故も起きていないそうだ。 同社のリコール措置について、業界に詳しい片山哲郎氏は「ミズノでは過去にゴルフ以外の商品でありましたが、今回ほど社会的に注目される商品のリコールは初めて。しかし、三菱自動車の問題から、今は企業倫理が厳しく問われているときです。瞬間的には企業イメージにダメージがあるかもしれませんが、長い目で見れば、信頼感を高めるチャンスでもあります。これを機会に、いま一度、一致団結して、より良いゴルフ用品を作り、盛り返してくれることを期待しています」と、同社の今後に注目する。 リコール対象のクラブは、送料着払いでミズノに送れば、無償で新しいヘッドに取り替えてくれる(問い合わせ先・0120-320-227)。