週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
伊藤は昨年まで、同時期に開催される世界ジュニア(サンディエゴ)に出場していた。今年もそのつもりだったが、予定外に日本アマで決勝まで勝ち進んだために、翌々日の最終エントリーに間に合わず、今年は出場を断念した。そこへ伊藤のキャディを務めたロス在住の末永慎吾氏(スポーツ店経営)が「それなら家の近くのホームコースで全米アマ予選があるから出てみたら。全米アマに出たら日本アマ10回くらいの経験ができる」と勧められ、伊藤も日本アマで自信をつけたこともあり、ふたつ返事で予選出場を決めた。 末永氏とは一昨年の夏休みからロスのホームステイ先としてお世話になり、今年の2月にミニツアーに参戦するきっかけを作ってもらってもいる。そこで伊藤は、プロも参加する3大会に出場し、3位、2位、優勝と好成績を残していた。 日本ではプロトーナメントのマンデーを通過し、プロやトップアマの大人たちとプレーした経験もあるが、アメリカでは180センチを超える大男たちの中で戦うことは14歳にしてみたら大冒険だったはず。 しかし伊藤は「300ヤード以上飛ばす人たちばかりだったけど、よく曲がるから全然怖くありません(笑)。英語もゴルフのことなら少しずつわかって来ましたし。でもやっぱり予選では、14歳だって言っても信じてもらえませんでした」と臆するどころか、あっけらかんとしたもの。ただ、全米アマの本大会には、違う意味でビビッていた。 今年の開催コースは全米オープンが過去4度行われた名門・ウィングドフットで行われるが、コースは全長7266ヤード、パー70とかなり長く、505ヤードのパー4などもあるハードなセッティングで戦わなければならないからだ。 「505ヤードのパー4なんて届きませんよ。でも、これを克服するために520ヤードパー5のレディスティからパー4の設定で練習してますし、僕には得意の5番ウッドがあります。これは日本一だと思ってますから諦めずに頑張ります」と、飛距離260ヤードのドライバーと、220ヤードの5番ウッドで勝負するという。 本戦は300人が出場し2日間のストロークプレーでの予選通過は64人。その後、3日間のマッチプレーで勝者が決まる。 伊藤の14歳1カ月13日は、日本人ではもちろん、大会史上最年少出場記録。日本人の最高位は01年に出場した清田太一郎(当時21歳)がベスト8。伊藤の目標は最低でも「予選通過」、そして清田の持つベスト8だが、大きな夢も見る。もし決勝まで進めば来年のマスターズ出場権を手にすることができるのだ。 「マスターズなんて……。でもオーガスタ行ってみたいなあ~。丸山茂樹プロと回ってみたいなあ~」ともちろん夢を諦めているわけではない。 タイガー・ウッズが全米アマに初優勝したのが18歳。まだ成長途中の14歳が……、とはとても想像できないが、我々もその夢を見てみたい。