週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
問題となっているのは「マーベリックツアー」といわれる南フロリダで開催されていたミニツアー。先の5月から夏のシリーズが開催されていたが、今季13試合目となる7月下旬の試合に、主催者のティム・アビラミディス氏が姿を現わさなかったことから「事件」が発覚。結局、選手に支払うべき賞金約30万ドルが消えてなくなっているうえに、試合そのものも継続できなくなってしまったのだ。 今回、注目度が増した理由は、ミニツアーの激戦区・フロリダで、マーベリックツアーが、あのJ・ニクラスが名前を貸すゴールデンベアツアーを競争相手として意識し、同ツアーから優秀な選手を引っ張ってこようとしていたと言われているためだ。そのため、出場試合の人数にかかわらず、最低10万ドルの賞金総額を約束していたが、結局、毎試合平均で49名しか選手が集まらず、一試合ごとに「2万7000ドル~4万5000ドル前後の赤字を出していた」(米ゴルフウィーク誌)とか。 ミニツアーというのは、基本的には、選手からの参加料を賞金に充てているため、参加選手が少ないとツアーが成り立たない。そして、その選手の負担も意外と大きいのだ。たとえば、ゴールデンベアツアーの来年、春シリーズ(12試合)は優勝賞金が3万ドル前後になることもあるが、登録料は1万3500ドル(約150万円)。1試合の賞金総額は、18万ドルを超える。また、ミニツアーの中では、もっともレベルが高いとされる、年間20数試合のフーターズツアーでは、登録料2000ドル、1試合当たりの参加料は平均で850ドル前後。 もちろん、賞金はPGAの下部ツアーであるネーションワイドツアーのほうが全然高いのだが、こちらはアメリカ全土で開催されるので経費がかかるし、完璧にフルタイムのツアー選手にならなくてはいけない。10万ドル以上を稼ぐには、ランク44位以内(昨年実績)に入らなければならず、また、ツアーそのもののレベルも高い。 つまり、クラブプロらが職業を持ちながら、自宅から通える範囲内で開催されるミニツアーのほうが、実力さえあれば、実質的にお金になるし、リスクも少ないという事情もある。そのため、アメリカでもっともゴルフ場が多いフロリダには、プロゴルファーも集まり、10を超えるミニツアーが開催される大激戦地となっているのだ。 逆に、今夏はコロラドを中心に開催されていたマウンテンステートゴルフツアーが、選手が集まらずにキャンセルされるという事態が起きているが、ある程度の賞金総額と安い参加料を約束した上に、地の利に恵まれないと、ミニツアーもやっていけなくなっているようだ。 今回の事件を起こした、アビラミディス氏も、かつてはフロリダのオーランドでもミニツアーを開催したり、ネーションワイドツアーに付いていき、マンデーに落ちた選手たちのための試合を開催したりと、業界ではそこそこに知られた人物。それだけに、故意に詐欺を行ったわけではなさそうで同情の声もあるが、二クラスと張り合おうと無理したことが、失敗の原因であったことは間違いがなさそう。 今回の事件がもとでミニツアー全体に対する信頼感が薄まらないといいが……。