週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。
9月1日に自社開発の4軸カーボンシャフト「アーマック」を装着したドライバーを発売したばかりの本間ゴルフに、いきなり強い追い風が吹いた。アーマックを標準装着した「ツインマークスMG410」を使用する馬場ゆかりが、発売3日前という絶妙のタイミングでヨネックスレディスに勝ち、馬場にとってのツアー初優勝という話題性も加わって、同社に問い合わせが殺到しているという。3軸の次は4軸という思惑通りに、4軸カーボンシャフトは、はたしてゴルフ用品業界の次の救世主になり得るのだろうか。 カーボンの糸を縦方向と横方向に織った2軸カーボンは、曲げには強いが、ねじれに弱いという性質を持っている。ヘッドの大型化とシャフトの長尺化によりデメリットが目立つようになり、それを解消するために開発されたのが、カーボン糸を縦方向と斜め左右60度の3方向に織り上げた3軸カーボンシートを巻く3軸カーボンシャフトだ。この3軸カーボンシャフトは、曲げ剛性とねじれ剛性にすぐれ、元の形に復元しようとする力が強いため、ヘッドが走るシャフトとして人気を博している。 4軸カーボンシャフトは、さらに横糸(円周方向)を組み合わせることで、曲げ剛性(縦糸)、ねじり剛性(斜め糸)に加えて圧縮剛性(横糸)を高め、断面のつぶれを抑える効果があるという。したがって、復元力はさらに強く、飛距離、方向性ともに向上しているというのがメーカーの言い分だ。 今年3月に「アクシブ」シリーズを発売したマミヤOPは、「飛びと方向性を両立する究極のシャフトを狙った」と断言する。 「4軸はあらゆる方向からの負荷に強いため、エネルギーロスがなくスムーズにしなる。方向性はずば抜けて良く、飛びに関しても自信を持っている」(同社国内スポーツ部開発課長・広瀬昇弘氏)。 同じく「プロシードAX-4」を発売するジャスティック社長・島村淳一氏は、「フィールドテストの結果を見ても明らかに曲がりが少ない。とくに芯を外して打ったときの誤差が少ない」と方向性・飛距離の両面での4軸カーボンの優位性を挙げる。 一方、業界では、別の意味での「4軸効果」に大きな期待を寄せている。「従来シャフト交換を依頼されるお客様は、標準装着シャフトが合わないハードヒッターがほとんどでした。しかし、4軸はシニア層を中心とした、従来はシャフトに興味を示さなかった方からの問い合わせが多い」(本間ゴルフ宣伝担当・桑木野洋二氏) また、マミヤOPでは、「アクシブ」には重量・キックポイント別に48種類ものシャフトを用意し、あらゆるゴルファーを想定したラインナップを揃えており、これまで標準装着のシャフトをそのまま使っていたユーザー層にアピールし、アフターマーケットを拡大する起爆剤としたい考えだ。 「狙った特性のシャフトがよりシビアに作れるようになった」というのはミズノ。 あくまでフィッティングの一環として4軸が合う人にのみすすめるというのがミズノの姿勢だが、「4軸カーボンの登場により、同じヘッドでより幅広いお客様にフィッティングできるようになった」(ミズノエスポート店クラブフィッター上原剛氏)というのもユーザー側にとっては大きなメリットに違いない。 3軸カーボンシャフトで大きなシェアを占めるフジクラは、「4軸といっても当社の3軸と考え方は同じ」(同社松本紀生氏)と静観する構えを見せており、3軸対4軸のシャフト戦争の行方も気になるところだが、要は自分のスウィングに合うかどうかが肝心。「一概に4軸だから3軸よりも優れているとは言い切れないが、可能性のある素材。あとは料理人が素材をどう料理するかにかかっている。素材が増えれば料理の種類も増えるので、今後どんなシャフトが出てくるか楽しみ」とクラブ設計家の松尾好員氏は期待を込めて語ってくれた。