週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
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　問題の“固定資産の減損会計”は、未上場の中小企業には無関係だが、平成18年3月期決算から全上場会社に義務づけられ、一足早く今期（17年3月期）に実施することも認められている。現在の会計ルールでは、不動産などの固定資産は、買ってきた値段で帳簿に記載され、その後時価が下がっても基本的にそのまま。建物は減価償却を毎年実施するので、少しずつ減るが、土地はまさにそのままだ。

　以前は有価証券も同様の扱いだったが、「今現在、その会社がどのくらいの換金価値のある資産を持っているのか一目瞭然にする」時価会計を基本ルールとする欧米先進諸国からの批難にさらされ、有価証券ではすでに先行して決算期末の値段に合わせる時価会計が導入されている。

　固定資産に関しては、原則、長く保有するものであって、頻繁に売り買いするものではないので、毎年決算のたびに帳簿価格をいじる必要はないけれど、帳簿に載っている金額の半分以下になったら、さすがに帳簿上の値段に戻る可能性は低いから、ちゃんと時価に合わせて帳簿価格を下げなさい、というのが減損処理の考え方だ。

「ウチの会社は保守的に考えて、半分ではなく3割下がったら減損をやる」など、自発的に厳しいルールで実施することも許される。帳簿上だけの処理なので、キャッシュは1円も出て行かないのに、帳簿価格を引き下げた分が会計上は損失になるので、その分がまるまる利益を食ってしまう。

　従って、戦前から持っている地方の工場用地などなら、もともと簿価が低いので減損処理が必要になることはまずないが、「造るのに100億円、売り値はせいぜい20億円」と言われるゴルフ場にこのルールを適用すれば、どうあがいても数十億円の損失が出る。最近では連結対象会社の範囲の認定も厳しくなっており、形式的に本体が持つ、ゴルフ場経営会社株の持ち株比率を減らしても、実質的に支配していれば連結対象からはずすことは出来ない。

　そこで、ゴルフ場経営会社を傘下に抱える上場会社の選択肢としては、どうせ減損で巨額の損失を覚悟せざるを得ないのなら、おとなしく減損を実施してコースの経営はそのまま継続するか、あるいは本業に関係ない資産としていっそのこと売却するかに絞られる。

　が、それも巨額の損失を計上しても、債務超過に陥らない会社が前提だ。債務超過に陥れば、上場廃止の危機にも瀕してしまう。このため、実際にはもう一つ、ウルトラCとも言える選択肢がある。民事再生、会社更生など、ゴルフ場経営会社の法的手続きをとる方法だ。法的手続きをとれば、それだけで無条件で連結からはずすことが出来るため、「系列コースを見放した」という批判さえ気にしなければ、本体の上場会社は安泰、減損は実質的に民事再生の手続きの中で、評価替えという形で実施するが、その際に出る損失は連結決算に反映されない。その上預託金債務も減る。逆に、会員にしてみれば、親会社の会計処理の問題でコースが倒産するリスクを抱えるのである。

　今回三井不動産は、減損を本来の期限よりも前倒しで実施して、ゴルフ場だけで総額230億円の損失を出す。対象は7コースのうち4コースで、具体的なコース名は「ノーコメント」とのことだが、三井不動産の平成16年3月期の有価証券報告書から分析すると、18Hあたり20億円前後と計算して、成田フェアフィールドGC、フォレストCC三井の森、三井の森軽井沢CCの3コースと、あとは臼杵CCあたりだろう。

　しょせん帳簿上の処理だから、会員への影響はまったくない。ゴルフ場以外の保有資産の分と合わせると、合計で340億円もの減損実施となるが、それでも当期利益は230億円も出る余裕ぶりだ。

　しかし上場会社の中には減損を実施したら債務超過という会社もある。実施期限の平成18年3月期に向け、来年夏ころから、体力に乏しい上場会社系列コースの民事再生が頻発する可能性は十分ある。上場会社系列だから安心、という見方では不十分で、減損に耐えられるだけの体力を持つ上場会社でなければ安心は出来ないということだろう。